大切なのは原因を突き止めること。仮定はすべからず。

つい最近、有名な米国企業の日本支社のCEOより、階層的なものより、フラットな企業組織の方が良いと思うかどうかという質問を受けました。彼の会社では、大切な情報が下から企業内の階層を通じて彼に届くまでに時間がかかるという問題に悩んでいたため、フラットな組織に変えればこの問題は解決するかもしれない、と考えたのだそうです。しかしこの質問自体が間違っています。というのは、その問題の原因が企業組織にあるという仮定に基づいており、その仮定からして正しくない可能性があるからです。

この場合、なぜ情報の伝達が彼が望んでいるほど迅速に行われていないのか、というのがもっと適切な質問と言えるでしょう。彼にこの質問をぶつけると、問題のネックは、どうも二人のマネージャーにあると感じているとのことでした。その理由は別々のものでしたが、少なくとも一人目の場合は、組織をフラットにしたところで解決するものではないし、二人目の場合はそのマネージャー自身に原因があるため、フラット化は一時しのぎの解決策にしかならないということが、彼にも明白に見えてきました。

企業で個人に能力の問題が出てくる理由は、世界中どこにおいても以下の四つに限られます。(うつ病といったメンタルヘルスに関するケースは別ですが。)

  • 「やり方がわからない。」
  • 「やりたくない。」
  • 「やりたくてもできない。」
  • 上記三つの組み合わせのバリエーション。

これらの原因の対処法は、それぞれ異なります。「やり方がわからない。」というケースであれば、教育で解決できます。私はここで「トレーニング」ではなく「教育」と言いました。トレーニングは動物に対して行うもので、人は教育するものです。この違いは覚えておいて下さい。こちらのビデオをご参考いただければと思います。

「やりたくない。」という社員には、彼らが個人的に利益があると感じているエリアに焦点を当ててやる気を起こさせる方法が考えられます。

「やりたくてもできない。」は、構造上の障害物やリソースの欠落が原因です。プロセスの是正、コミュニケーションの促進、権威がオーバーラップしているエリアの境界の鮮明化、十分な予算、人材、時間、インフラ、ノウハウ、テクノロジーの供給、といった解決策が考えられます。

前述のCEOに、その問題のマネージャー達の問題はどれに当たるかと聞いてみると、どちらも多分「やりたくない。」というケースだと思われるという答えが返ってきました。

つまりこのCEOは、「やりたくない。」という問題に対し、「やりたくてもできない。」用の解決策を使おうとしていたわけです。企業組織をフラットにすれば、下のレベルの社員が上司を通さずに情報を伝達することは可能になるかもしれませんが、それでは最初から伝達から抜く必要などなかった上司自身の問題を解決することにはならないのです。その上、このためだけに組織をフラットにしてしまえば、そのことにより、また別の問題が後から湧き出てくる可能性もあります。

CEOは私の意見に賛成してくれましたが、それでもとりあえず目先の問題に対処するには企業組織を変えるのが一番であると感じているようでした。それが正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも彼にはこの問題の根本的な原因がクリアになり、それに基づいて決定を下すことができると思います。

問題を解決するには、まずその根本的な原因を理解することが必須である。 Click To Tweet

このCEOも最終的には「やりたくない。」という問題を対処しなくてはならなくなるでしょう。熟成したウィスキーとは違い、こういった問題は時間が経てば改善するというものではないのですから。

それは彼にもすでにわかっているだろうとは思いますが。

日本ミシュランタイヤCEOから学んだこと

去る10月19日に、在日米国商工会議所と在日フランス商工会議所の共催で、日本ミシュランタイヤ代表取締役社長ポール・ペリニオ氏を迎えてのインタビューを、東京アメリカンクラブで行わせていただきました。

以下、ペリニオ氏から学んだことを、いくつか紹介したいと思います。

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研究開発部を利用して営業を上げるのは、リソースの無駄遣いである

営業担当者が、自社研究開発部の価値の高いサービスを無償で提供することによって、商品を買ってもらおうとするケースは度々見られます。それは顧客がそのサービスの料金を喜んで支払うつもりの場合でも起こっているようです。

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企業文化改革:人よりプロセスに焦点を

企業文化を短期間で改革する鍵は、人ではなく、そのプロセスにあります。まずはプロセスを変えるところに焦点を当てましょう。人に関する部分はその後で取り組むのです。

以前、全員が迅速に合意し、決定を下すことがなかなかできない管理部門の方達とお仕事させていただいたことがあります。その際、まず私が開発したプロセスを試すようお願いしました。彼らはそんなやり方がうまくいくだろうか、と疑いつつも、実行してくれました。その結果、わずか2時間のうちに、リストアップされていた戦略関連事項17項目を全てカバーすることができたのです。それ以前に何週間もかけてやった他の努力は、全て結果を出せないままでした。社長もマネージャーの多くも、問題の起因は企業文化とコミュニケーションのやり方にある、あるいはグループ内の特定の社員の性格のせいである、とずっと考えていたのです。しかし上記のとおり、単にプロセスを変えるだけで、この問題の殆どはすぐに解決されたのでした。

この新しいプロセスが役立つことを目の当たりにし、リーダーチームのマネージャーの多くはこのやり方を他の決定事項にも採用し、社員にも方法を教えて企業のあらゆる部署で使えるようにしたいと言っていらっしゃいました。そうなると社内の決定事項に関する態度が変わるでしょうし、ひいては企業文化も変わってくるはずです。社員に新しい価値観についてわざわざ納得してもらったり、ものの見方を変えてもらったり、大げさなトレーニングを計画したり、人事異動を行ったりする必要もなかったのです。単にマネージャーの方々に新しいプロセスを試してもらっただけで、このような効果があったのです。成功を体験することほど説得力のあるものはありませんから、それだけで十分だったのです。

ただ現実には、新しいプロセスを受け入れてくれない人々も存在します。これには3つの原因のみが考えられます。

  1. 「どうやればいいのかわからない。」
  2. 「やりたくない。」
  3. 「やりたくてもできない。」

それぞれの理由にはそれぞれの対応策があります。「どうやればいいのかわからない」は、教育によって解決することが可能です。「やりたくてもできない。」の場合には、構造上の障害物や、矛盾したポリシーやプロセスを排除すれば良いでしょう。「やりたくない。」というのが一番対処しにくいと思われます。人というものは自分にとって一番利益となると感じていることに基づいて行動するものです。それが一体何であるのかを見つけて対処する、あるいは該当する社員をそこから外す、と言った対応が可能です。

企業文化の変革を行う際、最初に人に焦点を当てることは、まるで大洋を沸騰させようとするようなものです。もし新しい企業文化の鍵となると思われる行動を特定できるのであれば、まずその行動を生み出せるようにプロセスを改定しましょう。もしそのプロセスがうまくいけば、多くの人々はそれを導入するようになり、いずれ企業内では当たり前のものとなるでしょう。新しいプロセスを受け入れない個々の社員については、その理由を探り、適切な対応をとってください。この方法をとることにより、安定した企業文化の改革を迅速に進めることができるのです。

まずプロセスに焦点を当て、第二段階に入ってから人にも焦点を当てていくこと。これが効率の良い企業文化改革の秘訣です。実際殆どの場合、うまくいくプロセスさえあれば、改革はうまく進むのです。

プロセス主導の考え方から、考えることを大切とするプロセスへ

日本にはプロセス主導の考えに縛られた会社が多すぎます。逆に本当に必要なのは、十分に考えることを大切とするプロセスなのです。プロセス主導の考えはプロセスにしっかり一貫して従うことを必要とし、日本人が大変得意とするところです。一方で考えることに重きを置くプロセスは、不測の事態に視点を据えています。状況により、とる行動が変わってくることになります。

会社には物事を正しく行うことに必死になるマネージャーがたくさんいますが、社長が実際彼らに望んでいるのは正しいことをやることに関心を持ってもらうことなのです。正しいことをやるためにはとにかく頭を使う必要がありますから、実はこちらの方が難しいことと言えます。また、これにはリスクもあります。プロセス主導の考えにおいては、どのような結果となったかに関わらず、決まりに従ったかどうかで個人個人の評価が行われますが、考えることを大切とするプロセスでは、柔軟な対応が求められ、結果によって成功、失敗の判断がされるわけです。

あなたの会社のプロセスは、考えることに重点を置いていますか。私がこれまでお目にかかった会社のリーダーは、程度こそ違いますが、もっと考えることを重要視するプロセスを欲し、また期待している方々ばかりです。

私が会社の文化を理解し見定めようとする際には、評価される行動、罰せられる行動、そして特になんの評価もされない行動を特定します。ルールがはっきりとしている場合もあれば、はっきりはしていないが理解はされていたり、また個人的な経験や他人の経験からのみ特定できる行動もあります。

どうすれば、あなたの会社において、考えることを大切とするプロセスを広めることができるでしょうか。また広まらない原因は?無視されるのはどんな時でしょう?まずそこから取り組めば、それが社員の考え方や働き方に変化を促す第一歩となるのです。