戦略についての従来の常識を忘れること

以下に挙げたのは、私が知っている中でも最も成功されている方々の戦略のやり方に基づいた、ビジネスリーダーの為の7つのアドバイスです。特に日本では、公開討論会で私がこれらについて述べると、必ず少なくとも何人かから反対意見が返ってきます。怒りを表す人が出ることさえありますが、それもまた予想できることです。

これらのアドバイスが私の意図通りに理解されれば、気持ちよく感じない人が出てくるのは当然なのですから。

Continue reading

説得力のある戦略とは

トップレベルの役員やマネージャーであれば、戦略を立ててそれをプレゼンする機会を与えられることがある筈です。彼らの多くは、自分の作った戦略が正しいことを証明するための長いプレゼンテーションを用意します。しかし、真に説得力のあるマネージャーであれば、逆に何故自分の戦略が間違っている可能性があるか、という理由を並べる筈です。
Continue reading

ブランドとはキャンペーンによって形作られるものではない

ブランドを形作るのはキャンペーンではなく、リーダーです。企業内の人間が考えているブランドを一般の人々に知らせるのがキャンペーンであり、それはリーダーであるあなたがそのブランドを気に入っているかどうかとは関係ありません。そしてそこに不一致があれば、たとえ何をやってもブランドキャンペーンは失敗に終わるでしょう。

私はブランドとは、名前やシンボルを見るだけで、特に他の説明がなくとも一定の価値観を感じさせてくれるもの、と考えています。ブランドを創り出したり変えたり、という作業は、何よりもまず企業内部で手をつけるべきで、社外で始められるべきではありません。私は、社員と話し、その行動を見るだけで、企業のブランドが何かを学ぶことができます。そこから感じ取れる価値は歴然としたものですから、消費者アンケートや市場調査など、必要ありません。

ブランディングは企業のリーダーにかかっています。以下は私からそんなリーダーの方々へのアドバイスです。

  1. ブランド再構築は、社員の行動の改革から行うことなしでは、消費者に対してのその成功は望めない。いくら保険会社が熱心に自社のブランドの信頼度を強調しても、人々は圧倒的に彼らを信用しないこともあります。例えば保険査定人に自分を信用してもらえていないような態度を取られたら、何故この保険会社を信用しなくてはならないんだ、と感じたりするでしょう。保険査定人は、クレームを提出されると、まず正当性が立証されるまではそれを認めず、細かく何から何までチェックをし、支払いを遅らせ、できるだけ支払額も小さいものにしようとします。あなたはご自分のブランドを信用してもらいたいと思っていますか。もし保険査定人が、クレームの不当性が証明されるまではそれを正当なものとして扱い、クライアントがもらい損ねた保険金が入ってくるように調整し、保険金の支払いもできるだけ早く行ったら、あなたのブランドの信頼度は変わると思われませんか。
  2. ブランドの影響力は、顧客と直接コンタクトからの影響以上のものではない。ホテルで最も重要な従業員は、最初に顧客と接するドアマンです。顧客がどのように迎えられるかは、ホテルのブランドが活きるかどうかに多大な影響を与えます。日本の新幹線では、車掌による定期的な一等席乗客の指定席券のチェックを取り止めました。指定席券無しで一等席に座る人をチェックするのは、高いお金を出して一等席に正当に座っている顧客に不快な思いをさせることに値しないとわかったからです。
  3. ブランドをいくら洗練されたものにしたとしても、指針はどのような場合でもプロセスをしのぐ。あるCEOが有名な5つ星のホテルに電話をして、役員チームのミーテイングのために朝食用の予約を入れようとしたのですが、そのホテルのレストランは予約を取らないことになっていたため、電話に出た従業員はそれを断りました。顧客の要望を叶えるのがホテルのモットーであるにも関わらず、です。費用とタイミングさえOKであれば問題はない筈なのです。代わりに個室での朝食会を提案することだって可能であったかもしれませんし、顧客へのサービスとして、コンシェルジェに頼んで近くのレストランを予約することくらいもできたでしょう。 指針は大切なものです。あなたも社員も、自社の指針をうまく説明できますか。
  4. ブランド戦略についてアドバイスすると同時に広告スペースを売ろうとするような代理店は避けること。往々にして利益相反が存在するため。ファイナンシャル・アドバイザーが金融商品の販売も行うと、そこには自然に利害の対立が発生します。ブランド戦略とアドバイスも同じことです。価値の高いアドバイスに対して多くの金銭を払うのに問題があるわけではありません。しかし、そのアドバイスに従ったメディアの購入は、別途に行われるべきです。
  5. 世界中でも最も強いと考えられるブランドは、業界や文化の決まりに従ったりしない。このことを否定するような人に耳を傾けないこと。アップルはアップルストアをデザインするにあたって、一般の社会通念に全て反することを行いました。失敗するに違いないという専門家達による予測にも関わらず、フィフス・アベニューに建てられたその店は、面積比で見ると、同じエリアの他のどの店舗よりも高い売り上げを誇っています。日本のコストコは、小さな家で暮らす日本の消費者達がまとめ買いをする訳はない、という専門家達の意見を無視して開業しましたが、蓋を開けてみると、どの店も毎週末には買い物客で賑わい、新しい店舗ができれば、メンバー登録をしたいという人々が長蛇の列を作る姿が見られます。世界でも有数のブランドは、他社と反対の行動を取り、大胆で、波を立てます。あなたのブランドもそうあるべきだと思いませんか。
  6. 力のあるブランドは国境をも越えて行くが、成功するには十分考え抜かれた戦略と努力が必要である。アメリカのアウトドアスポーツの小売店であるREIが、そのブランドが日本でも有名だからという事実に甘えて、日本市場に参入しても成功する、と考えたのは思い上がりでした。REI社は瞬く間に日本ビジネスから撤退し、戻ってくることもありませんでした。アディダスは日本市場シェア一位を誇りますが、それは彼らのブランドが世界中に知れ渡っているからという理由のせいではありません。アディダス・ジャパンは日本でのブランド開発、促進に多大な力を注ぎ、まずそれを社内から実践したのです。例えば日本市場のための日本ブランドの商品は、日本にある研究開発部で開発され、のちに世界中でも販売されます。アディダスは単なる海外ブランドの伝達者というわけではないのです。アディダス・ジャパンは世界中にある他のアディダス社と同じくらい、グローバルなブランドを作り上げており、そのことは社員も理解しています。
  7. 自社のブランドが市場でどう受け止められているかを知りたければ、社の営業スタッフに、あなたの会社で働いていることについてどう感じているか、聞いてみるとよい。企業のプロセスや文化は大切です。私は、仕事に満足していない社員から良いサービスを受けたことなど一度もありません。同様に、営業スタッフが労働環境に不満を抱いたり、社の製品が顧客のニーズに合っていないと感じていたり、カスタマーサポートが不十分だと思っていたり、営業方法が不適切であったり非道徳的であると感じていたり、そうでなくとも製品が顧客のためには役立たないと感じていれば、どんなに素晴らしいマーケティングや膨大な広報キャンペーンを行ったとしても、そのネガティブな気持ちはどうしてもブランドに影響していきます。逆に営業スタッフが自分たちが売る商品を愛し、それが顧客の役に立つと感じ、自分でも使ったり家族のために購入したりもし、顧客の役に立つことが一番大切というのが営業プロセスの基本にあると信じていれば、その熱意が伝わる筈なのです。
  8. コンテンツを作り出すことによるブランドの創造は、何らかの形で顧客の生活の質の向上に役立たねばならない。それ以外のことは雑音にすぎない。有名なドイツのカメラ製造業レイカ社はオンラインと印刷物の両方の媒体で雑誌を発行し、素晴らしい写真アートを紹介したり、写真コミュニティーのアーティストやプロから、彼らの考え方や働き方について語ってもらったりしています。ランニングウェアを作るサロモン社は、世界中の魅力的なロケーションで道を走るランナー達を描き、圧倒的な撮影技術を使ったオンライン視聴用の短いTVシリーズを作成しています。これらのブランドのファンであろうがなかろうが、写真やランニングが趣味であれば、こういったコンテンツには引き込まれずにはいられないでしょうし、もっと見たいと感じて何度も新しいコンテンツをチェックしようとすることと思います。あなたのブランドのコンテンツには魅力はありますか。そしてそれは人々に価値をもたらすものですか。それとも商品を売るために気を引こうとしている他の多くの企業の中で、単に目立とうとしているだけですか。
  9. 押し付けは自分を卑しめる結果を招く。反対する人たちへの理解を示すことこそが、尊敬を生み出すものである。顧客に押し付けがましい行為をすることは良くないし、自分に賛成してもらうために金銭を与えることはもっとひどいことです。社員を支持者に変えるというのは本質的に政治的な行動です。同じ水を飲むことで、自分の熱心さを証明しろというようなものです。人事部は企業文化の世話役、そして同時に思想の取り締まり係となります。それに対し、自由な思想を持つ大人達は、反対意見を述べることが許されます。本当に素晴らしいブランドは、ブランドではなく、顧客を一番大切に扱います。日本の高級眼鏡チェーン、パリミキの代表取締役会長、多根幹雄氏とランチをご一緒させて頂いた時に聞いた話ですが、パリミキの掲げる目標は、メガネをかける必要のある人々一人ひとりに幸せに感じてもらうことだそうです。彼らは日本メガネ産業のユニクロとも呼ばれているJINSの顧客を奪うことを目標にしたりはしていません。多根氏はJINSのビジネスは素晴らしいが、パリミキも素晴らしいビジネスをやっているとおっしゃっていました。単に別のビジネスというだけなのです。社員にせよ顧客にせよ、誰でも自分にとってどちらが最良か選ぶ自由を持っているのです。勝つのは顧客がついてきてくれることに自信を持っているリーダーなのです。
  10. 自分のブランドを一番良く伝えられるのはあなた。自分でそうなることを選択しさえすれば。あなたなしでは、全てのブランディングは技巧でしかありません。
ブランドの創造にはしっかり関わること。会社内での方向性がまとまっていなければ、外に向けてのキャンペーンにも殆ど意味はない。 Click To Tweet

この記事のオリジナル版はCampaign Asiaに掲載されました。

2018年を予測する

私は将来の予測をすることが好きなのですが、年初めということで、2018年についても10の予測を立ててみました。

Continue reading

日本市場参入について

先週のことですが、英国デイリー・テレグラフ紙のレポーターから、私の日本市場参入の際の大変さについての考えを聞かせて欲しいと連絡を受けました。

私は日本への市場参入について、このような意見を持っています。

  1. コミュニケーションが上手な人であれば、言語は壁にならない。 国際コミュニケーションに長けているとは、たとえ共通の言語を話さない相手のことも理解できるということです。たとえ英語を話す人同士でも、意味を取り違えたり、勝手に理解したつもりになることはしばしばあるものです。本当に相手の言うことを理解したかどうかを確認するために質問したり、自分の意図するところをわかってもらうために例を挙げたりしましょう。たとえ日本でも、もし相手が言わんとすることが不明確な場合、説明をお願いすることは決して失礼にはあたりません。不明確なままにしておくのは良くありません。
  2. 日本でもどこでも、成功するためには市場検証は不可欠である。念入りに行うこと。 出回っている一般のレポートや、ジェトロ、業界促進団体などからのアドバイスを当てにしてはいけません。日本市場のエキスパートと言われている人々のの予想も鵜呑みにせず、疑ってかかりましょう。たとえ市場検証が専門の会社を雇った場合でも、同時に自分達でも同時に検証を行うことをお勧めします。潜在顧客に会って質問をし、自分の仮定事項を検証して下さい。あなたのビジネスのことを一番よく分かっているのは、あなた自身なのですから。
  3. 国にかかわらず、ビジネスが成功するためには最高のリーダーが存在することが必須である。 業界にコネのある日本人、というだけでは不十分です。従来の考えでは、業界経験が豊富でコネもある年配の日本人男性がリーダーとして相応しいと言われてきました。しかしこのアプローチが上手くいったケースは、一件も知りません。業界経験があるからといって、ビジネス上の洞察力やリーダーシップ能力があるとは限りません。顔の広さが自分の一番の武器だと考えているような人はしばしば、自分の知り合いに不利になるかもしれないようなことをビジネスのために行わなければならなくなった場合、しばしば躊躇してしまいます。つまり、自分の知り合いをビジネスより大事にしてしまうのです。
  4. 日本人に日本についての説明を受けたとしても、それがいつも正しいとは限らない。 日本人だからといって、日本におけるビジネスのエキスパートというわけではありません。そのような人たちからのアドバイスは、かなり割り引いて聞いた方が良いでしょう。日本人からのアドバイスをもし鵜呑みにしていれば、セブンイレブン、コストコ、ユニクロ、未シェラン、BMW、アディダス、ゴディバといった会社が日本市場に参入することはなかったでしょうし、まして日本で大成功を収めることもなかった筈です。
  5. 顧客の要求が高いのは日本では当たり前であり、また、資産でもある。 アディダスやミシェランは日本市場のための商品を開発しましたが、その品質が高かったため、結局世界中で販売することに成功しました。これはあなたにもできることです。
  6. 本国でのブランド力が海外でも通用するとは限らない。 あなたのビジネスが日本国外でいくら有名であっても、日本市場でのブランド開発にも投資をする準備をしておきましょう。
  7. 価値とは世界共通のもので、それは日本でも同じである。 画期的技術や素晴らしいサービスを兼ね備えた製品があれば、日本でもそれ以外の国でも成功するでしょう。フランスの会社であるミシェランは、最高級のタイヤを日本の自動車やトラックの製造会社、そして日本航空の飛行機用にも供給しています。
  8. 日本で最も成功しているビジネスは、システムに合わせるのではなく、それに抵抗しており、誰でもそうするべきである。 日本企業であるファーストリテイリング社は、日本の被服産業を根本から翻しました。ソフトバンクは一般消費者向けの電気通信サービスの定義を覆しました。現在ではセブン&アイ・ホールディングスとなったイトーヨーカドーは、セブンイレブンと共に、小売産業に大改革をもたらしました。スターバックスは、日本のコーヒーショップの概念を変えました。ホンダ技研はその昔、省庁からの指示を無視して、自動車業界に参入しました。あなたにはどのような抵抗ができるでしょうか。
  9. まず大切なところに投資をしさえすれば、日本市場に足場を築くことは他の市場と比べて難しいということはない。 上記のポイントはどれも、日本という言葉をどこの国に置き換えても通用します。
日本市場に参入する予定があれば、これらの重要なポイントを考慮すべし。 Click To Tweet

日本の企業文化が芯まで腐敗しているというのは間違いである

エクイファクスやウェルズ・ファーゴ、バレアント、カントリーワイド・ファイナンシャルやワシントン・ミューチュアルがサブプライムローンの危機に関して悪名を馳せた時も、エンロンの不正が告発された時も、それがアメリカ企業文化が腐敗していることに起因しているなどと言った人は誰一人としていませんでした。それなのに、日本で企業の不正行為が発覚したら、それを日本企業文化に繋げようとする人が出てくるのは何故でしょう。

神戸製鋼所が、日本国内外の製造会社に供給する自社鉄鋼製品のデータ改ざんを行っていた、という事件が明るみになりました。似たような事件がここのところ日本で立て続けに起こっており、やはり日本の企業文化はすっかり腐敗してしまっているのではないか、という議論がまた頭をもたげているようです。アジア太平洋版のブルームバーグも10月11日の生テレビ番組Marketsでこの問題を取り上げ、私もその中でインタビューを受け、意見を求められました。

決まった「日本企業文化」などというものは存在しません。ですから日本企業文化を問題視するべきではありません。しかしながら、神戸製鋼の企業文化に大問題があることに間違いはありません。

神戸製鋼は日本の企業文化に則った日本の企業である、と見ていらっしゃる方も多いでしょう。しかし、全体に行き渡っている共通の日本企業文化など、ありません。ユニクロで知られているファーストリテイリング、サイバーダイン、ソフトバンク、無地ブランドの良品計画、そして日本航空などの会社は全て神戸鉄鋼と同じく日本の会社です。それにも関わらず、これらは全て神戸鉄鋼とは全然異なる企業文化を持っています。実際、ここに挙げた全ての企業には日本企業でありながら、それぞれ異なるユニークな企業文化があり、少なくとも私たちに見える範囲では、神戸鉄鋼が行ったような不正は働いていません。

不正、不法な行為を日本の企業文化のせいにするのは、日本で真っ当なビジネスを法に則って行い、世界に貢献している大半の企業に対して失礼なだけでなく、危険性をも含んでいます。それは問題の根本的な原因を無視しているわけですから。本当の原因を理解することなしに問題を解決することはできません。問題を日本の企業文化のせいにしてしまえば、それが身代わりの理由となり、「仕方ない」で済まされてしまう言い訳となってしまうのです。日本の文化を一人の力で変えるなどということは無理ですね。企業のリーダーが自社で起こった不正を日本の企業文化のせいにするなどというのは、自分自身のリーダーとしての責任を放棄する最悪のやり方です。

国が企業文化を形成するわけではない。それはリーダーがやること(あるいはやり損ねること)である。 Click To Tweet国が企業文化を形成するわけではありません。それはリーダーが造るもの、もしくはリーダーがちゃんとやらないせいでできてしまうものです。神戸鉄鋼やその他の企業で起こった不正を理解したいのであれば、その企業のリーダーからスタッフレベルの社員に到るまで、その態度について見てみるべきです。

私も以前、ある企業から同様の依頼を受けたことがあります。そのエンジニアリング企業のCEOから電話をもらい、「多々起こっている重大事故の原因となったと考えられるのは安全確認手順がちゃんと守られなかったからと考えられるが、その根本的な原因はどこにあるかを調べて欲しい」と頼まれたのです。このCEOの方は私が調査を開始する前から、問題の原因は現場スタッフにあると考えていました。しかし私の調査で明らかになったのは、マネージャーが業績を上げるために、安全手順を無視するよう、さりげなく、またある時は露骨にスタッフに圧力をかけていたということでした。このやり方は何十年も続けられてきており、下から上がってきた中間管理職の人々はそれが普通であると考えているような有様で、その多くはわかっていて共謀してさえいたのです。この考え方は上層マネージャーまで行き渡っていました。

これを指摘されると、CEOも上層役員達も、こういった不正は日本では当たり前で、利益を出すためには必要なものだ、と抵抗しました。このような言い訳が通用するわけがありません。実際、この企業が最近買収した日本のライバル社にはそのような不正は見られず、しかも利益を出していたのです。

このように日本の企業文化が言い訳に使われることはしばしばありますが、それが日本の企業の弊害の真の原因であることなど皆無です。原因は企業のリーダーがコントロールできる範囲にある何か別のものである筈です。国の文化と考えられることが理由でリーダーにはどうしようもできないことなどありません。ビジネスリーダーであれば誰でも、自分の望む企業文化を造ることができますし、またそうするべきなのです。たとえそれが国の文化に沿わないと思われるようなものであってもです。楽天のCEO三木谷浩史氏は、グローバルビジネス文化を社内で強制するために、社員が雇用され続ける条件として英語を身に付けることを要求しました。これは、終身雇用が当たり前とされ、外国語を苦手とする人が多いことが有名な日本では考えられないことです。日本マクドナルドのCEOサラ・カサノバ氏は、あるスタッフが直属の上司に素晴らしいアイディアを何度も拒絶された後に自分に直接掛け合ったきたことを評価し、彼女に改革プロジェクトを任せるなど、イノベーションに関してはそれまで重視されていた階級を取っ払ってフラットな企業を強要するといったことを行い、傾きかけていた同社を4年で立ち直しました。日本航空のCEO稲盛和夫氏もまた、日本の企業の変革を見事に行った経営者です。稲盛氏は社員全員に仏教に基づいたビジネス哲学を要求し、それは関連クラスをとることを義務とするなどといったものさえ含まれていました。彼の考えでは、社員はサラリーマンの美学の象徴とされていた自己犠牲、謙虚さなどを重要とするのではなく、何よりも幸せであるべきだとという強い考えを持っていたのです。ゴディバジャパンのCEO、ジェローム・シュシャン氏は日本の弓道に基づいたビジネス哲学を社内に取り入れています。それはポイントを取るにはターゲットに当てるだけでは不十分であり、正しい姿勢を保つことも必要である、という考え方です。神戸鉄鋼との大きな違いは、ビジネス上の利益を出しても、その姿勢が正しくなければゴディバでは許されない、という点です。弓道ほど日本的なものが他にあるでしょうか。ここに挙げたリーダーの誰一人として、自分の会社に自分の求めている企業文化を作り上げる上で、典型的な日本の企業文化の概念などを気にした人はおらず、それでも皆、素晴らしい成功を収めています。

しかし、三木谷氏、カサノバ氏、稲盛氏、そしてシュシャン氏が行ったように、ビジネス実績を上げるために企業文化を取り入れることと、違法、不正なやり方を無くすために文化リフォームを行うことは別物です。企業文化を創り出す場合は、リーダーが変革を導くことができます。しかし後者の場合、リーダーが信頼を得て改革を推進することはできません。単に新しい宗教を見つけたので最初からやり直したい、などと言っても無理なのです。不正があった場合に真の改革を行いたいのであれば、リーダーはもちろん、その不正に関わっていた中間管理職レベルの人たちも総入れ替えされるべきです。

神戸鉄鋼にとって、これは受け入れがたいことでしょう。これまでにデータ改ざんは10年以上行われてきたこと、そしてそれは社内の限られた部門以外でも行われてきたことが明らかになっています。私が調査を行った会社と同様、昇進を繰り返して今の地位に至ったマネージャーの多くが不正について少なくとも気づいていたことや、共謀さえしていたことは想像に難くないですし、CEOの川崎博也氏の耳に届いていたこともあり得ると思われます。神戸製鋼には、ごまかしをすることでビジネスを成功させるような方法をとってきた何代にもわたる中間管理職の人々がいる可能性も高いでしょう。例えば、スポーツとして自転車をやっている人が、ランス・アームストロングに師事したいと思うでしょうか。神戸製鋼でも、不正を行ったマネージャー達を尊敬し、彼らのもとで学びたいと思う社員がいると思いますか。あなたがCEOであれば、社員をそのようなマネージャーの下で働かせたいですか。社内の最高の人材を失いたいのであれば、凡庸な社員を甘やかせば良いのです。

神戸製鋼の声明によると、問題の製品のスペックは正しくはなかったけれども、まず安全性に問題はなく、事故を起こすようなことはない筈だとのこと。マネージャー達の何人が、この内容を言い訳に使って不正に加担していたのだろうと考えると、ぞっとします。神戸製鋼の現在のトップ達がこのような内容の声明が受け容れられると考えていること自体からも、彼らの傲慢さ、先見の明のなさが感じられます。過去10年間に起こった事故について、原因を究明するために調査のし直しが必要となるものも出てくるでしょう。上記の声明を出すことを認めるような現在のリーダー達に、会社の改革を任せることができると思いますか。

富士フィルム、東芝、タカタ、三菱自動車、日産自動車と、日本ではここのところ立て続けに企業における事件が明るみになり、そのせいで日本自体に問題があるのではないかと考えられるきらいがあるようです。しかし、見る目を変えれば、日本が正しいことを行っているからこそこういった問題が浮上してきた可能性もあるとも思えないでしょうか。私たちがこのようなニュースを目にするようになった理由は、企業の透明性が上がってきたり、不正に対する許容が認められなくなったり、ビジネスリーダーや彼らの企業の社会への貢献度がより多く求められるようになったからとも考えられませんか。確かに日本の管理規制にはまだまだ問題があるかもしれませんが、世界的にも、企業やそれをリードする人たちに求められる最低の態度、行動様式の基準のは世界的にも一致してきたように思われます。特急列車アセラエクスプレスがニューヨークのペンシルベニア駅を25分遅れて出発すると、乗客はブツブツ言いますが、ニュースになどなりません。でももし日本で新幹線が東京駅を25分遅れて出発したとなると、日本では大きなニュースとして取り上げられるのです。だからと言って、日本の高速列車で起こるような問題がアメリカでは起こることがない、という訳ではありませんよね。

では、この先、企業における不正を無くす、あるいは少なくとも減少させるためには、どうすれば良いのでしょうか。日本の企業不正の根にあるのは政府による規制が緩いということであり、その規制をもっときつくすれば不正は減る、という味方があり、私も政府規制を改善する必要があるという点には賛成です。しかし、規制は不正の大元の原因ではありません。逆に不正を取り締まるための最後の砦として存在するものです。考えてもみてください。アメリカもドイツも厳しい規制を強いていますが、それでもウェルズ・ファーゴやフォルクスワーゲンの不正を止めることはできませんでした。規制レベルをどれだけ上げたとしても、不正というものはなくならないのです。

企業不正問題を解決できるのは、規制の強さではありません。それはリーダーシップの強さであり、さらに特定すると、ビジネスリーダーの人格の強さと言えます。ここで私が言う人格とは、たとえすぐに何かしらのペナルティがあることが見えていても、またそのペナルティがどれだけ大変なものかとわかっていても、自分の信じた道を貫く意志のことです。例をあげましょう。オリンパス社のCEOマイケル・ウッドフォード氏は、自分自身にすぐに火の粉が降りかかることがわかっていながら、社内での不正を発見してすぐにそれを公にしました。セールスを捏造することを拒んだり、問題を公にしようとしたウェルズ・ファーゴの社員の多くは、職を失っただけでなく、履歴書に汚点ができてしまったことで金融業界で新たな仕事を得ることがほぼ不可能な状態に陥らされました。このような自分が正しいと思ったことを貫ける不屈の精神は、人格の強さを表していると言えるでしょう。

将来ビジネスのリーダーシップ能力を強化できる人とは、現在のビジネスリーダーだけです。リーダーとは訓練して育てられるものではありません。彼らは自分の上にいるリーダーから学ぶことによって、時間をかけて成長するのです。私が知っている中でも成功しているビジネスのリーダー達は、自社の企業文化の中に、次世代リーダーを育成していくために、二つの面を取り入れています。一つ目は、失敗は学習の機会として捉えるということ。良いアイディアはそれが例えうまくいかなくとも評価されます。それはつまりビジネスで結果をだすと同じくらい正しい姿勢が重要と見なされているということなのです。こうすることで失敗はなんとしてでも避けるべきこと(例えば目の前の失敗や罰を避けるためにデータを改ざんする、など)と言う考えが無くなります。代わりに失敗はビジネスを成功させる上で起こって当たり前のもの、と見られるのです。

二つ目は、いくら影響が小さいものであれ、不正、違法な行動は、絶対に許されない、ということ。例えば、トップの営業担当者が個人的に利益を得るため経費を水増しして請求したりすれば、即解雇となります。そうすることで企業内の不正行為を根元から断つことになるだけではなく、その営業担当者の上に立つマネージャーの人格を強くすることにもなります。

トップ営業マンを不正行為のために解雇する羽目になったマネージャーの方々は、よく売上が落ちたり、顧客との関係にヒビが入ったり、といったことを心配します。人格が強くないマネージャーほど解雇をためらい、不正行為を多めに見て、その結果周りの社員に、この会社では不正行為をしても大丈夫、という考えを受け付けてしまいます。このような社員がいずれ昇格して部下を持つマネージャーになったら、どのような行動をとると思いますか。

あなたがビジネスリーダーであるのなら、自分の描く企業文化を作り上げるために何を強要していますか。あなたのビジネスの未来のリーダーの素晴らしさは、今、あなたが創り上げている企業文化が左右するのです。またその文化が、神戸製鋼やその他の企業に起こってしまった問題が自社に起こることを回避する助けともなるかもしれません。

さて、神戸製鋼はこれからどうなるのでしょうか。神戸製鋼の役員達はこれから困難な決断を下す必要があります。もし神戸製鋼が、今回の不正に加担していたリーダーを全て解雇し、新しいリーダーが強い人格を育むような企業文化を創り上げることに取り組むのであれば、私は彼らの株を買います。そういったことさえもできないのであれば、売り払ってしまうでしょう。

——————

スティーブン・ブライスタインは、東京をベースとしたコンサルティング会社(株)レランサの代表取締役社長である。最新著書は、Rapid Organizational Change (Wiley & Sons, 2017)。

リーダーとそうでない人との違い

御社のスタッフには、リーダーになれると思われる人と、ちょっとリーダーには無理かと思われるような人の両方がいますか。

性格分析や仕事への取り組みに関する質問調査の結果でそれを判断することなどは避けるべきです。こういったテストは本当に正しいかどうかの証明はされておらず、重役レベルのリーダー候補者を占いで判断するのと同じようなものなのです。

リーダになるべき人材も、中間管理職落伍者の手先のような人材でも、一定パターンの態度を示すものである。 Click To Tweet

以下にその例を23点、挙げてみました。

リーダータイプの人                             中間管理職の手先タイプの人
決定事項やそれに関して取られたアクションを報告する。 まず上司からの許可を求めたり、指示が与えられるのを待ってから行動する。
全員での決断が必要な場合、オプション、リスク、考えられる予防方法や不測事態をリストアップし、その上で、提案を行う。 オプションの提示なし。一つのやり方のみを推す、もしくはそれがうまくいかないであろうということを説明するかのみである。そして膨大なデータを使って、その根拠を正当化しようとする。
可能と思われる投資利益率を金銭的に数値化することができ、また、それをその規模の順番で(何万ドル、何十万ドル、何百万ドル、など)述べ、それらの数値を導き出した方法の説明も行える。 ある投資の価値の規模を聞かれると、確実に答えを出すことができないと言い、予想さえしようとしない。
ホワイトボードを使い(或いはホワイトボードがない場合でも)、3分以内で戦略を説明することができる。 戦略の説明には、それを準備する時間と80ページのプレゼンテーションスライドを必要とする。
エキスパートとして、自分の視点を主張する。 膨大なデータを使って、自分の視点を前もって弁護しようとする。
上司からの質問も、会話の一部として冷静に受け止める。 上司からの質問は、口頭試験を受けているかのように答える。
人に好かれるに越したことはないが、それが仕事上必要なことではないと理解している。 人からどう思われているかが気になって仕方ない。
部下の態度、結果には、責任を持たせる。 部下が結果を出さないと、それを避難する。
必要であれば、良心の呵責を感じることなく、人を解雇する。 よっぽどの違法行為が行われた場合以外に人を解雇することは、非道徳的だと考えている。
データをいちいち見なくても、重要な財政上の数値はいつでも把握している。 ビジネスの財政上の状況を聞かれると、データを見ないとわからない。
業績の悪い社員を維持することによる悪影響を心配する。 業績の悪い社員を解雇したら、他の社員たちがどう感じるかを心配する。
差別化を行う。優れた者を優遇する。 道徳的であるべきという理由から全員を平等に扱うことが大事と考えている。もしくは自分に追従する者に甘くする。
人事がビジネスにとってベストと思われないような行動を取ろうとしたら、それをストップする。 人事を逃げ道に利用する。
会社に忠誠ではない。自分が成長する機会が失くなったと感じれば、躊躇することなく社を去る。 もし会社を辞めれば次の職を見つけられるかどうかを心配しており、今の会社に忠誠を誓っている。
アシスタントや代理人とは交渉を行わない。 直接決定権をもつ人に連絡をすれば、それをよく思わない人が出てくるのではないかということが気になってしまう。
営業という仕事が大切な職業だと思っており、セールスコールには全て答える。(たとえ「現在は興味はありません。」と言うことになっても。) 営業してくる人を迷惑と感じ、セールスコールはまず秘書にふるい分けをさせる。
オフィスの様子をしばしば実際に歩いて見て回る。 重要な仕事で多忙を極めているふりをして、デスクにずっと座っている。
収益を上げることを優先事項にする。 コスト削減を優先事項にする。
携帯にかかってきた電話を取ることはまずないが、常にすぐに返信する。 大切な案件の電話を逃さないよう、携帯への電話はちょくちょくでる。しかし出損なった電話への返信はしたりしなかったりである。
決断を下さないことはどんな決断より最悪だとわかっているので、素早く決断を行う。 どんな決断でも間違えれば自分の経歴に影響する可能性があるので、まず仮の(そして時には優柔不断な)決断を下す。
仕事の状況に関わらず、自分のための時間をとる。 いつも過労状態である。ビジネスのためには自分を犠牲にする。
多岐にわたる興味、趣味を持っており、様々なトピックについて賢明な会話ができる。 趣味などに費やす時間がないほど忙しい。仕事が一番大事である。
会話の中にしばしばユーモアを取り入れる。 ビジネスはビジネス。ユーモアなど必要ないと感じている。

あなたはどう思われますか。

自社のリーダー候補たちには、どのような態度を求めていらっしゃいますか。

研究開発部を利用して営業を上げるのは、リソースの無駄遣いである

営業担当者が、自社研究開発部の価値の高いサービスを無償で提供することによって、商品を買ってもらおうとするケースは度々見られます。それは顧客がそのサービスの料金を喜んで支払うつもりの場合でも起こっているようです。

Continue reading