説得力のある戦略とは

トップレベルの役員やマネージャーであれば、戦略を立ててそれをプレゼンする機会を与えられることがある筈です。彼らの多くは、自分の作った戦略が正しいことを証明するための長いプレゼンテーションを用意します。しかし、真に説得力のあるマネージャーであれば、逆に何故自分の戦略が間違っている可能性があるか、という理由を並べる筈です。
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2018年を予測する

私は将来の予測をすることが好きなのですが、年初めということで、2018年についても10の予測を立ててみました。

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日本市場参入について

先週のことですが、英国デイリー・テレグラフ紙のレポーターから、私の日本市場参入の際の大変さについての考えを聞かせて欲しいと連絡を受けました。

私は日本への市場参入について、このような意見を持っています。

  1. コミュニケーションが上手な人であれば、言語は壁にならない。 国際コミュニケーションに長けているとは、たとえ共通の言語を話さない相手のことも理解できるということです。たとえ英語を話す人同士でも、意味を取り違えたり、勝手に理解したつもりになることはしばしばあるものです。本当に相手の言うことを理解したかどうかを確認するために質問したり、自分の意図するところをわかってもらうために例を挙げたりしましょう。たとえ日本でも、もし相手が言わんとすることが不明確な場合、説明をお願いすることは決して失礼にはあたりません。不明確なままにしておくのは良くありません。
  2. 日本でもどこでも、成功するためには市場検証は不可欠である。念入りに行うこと。 出回っている一般のレポートや、ジェトロ、業界促進団体などからのアドバイスを当てにしてはいけません。日本市場のエキスパートと言われている人々のの予想も鵜呑みにせず、疑ってかかりましょう。たとえ市場検証が専門の会社を雇った場合でも、同時に自分達でも同時に検証を行うことをお勧めします。潜在顧客に会って質問をし、自分の仮定事項を検証して下さい。あなたのビジネスのことを一番よく分かっているのは、あなた自身なのですから。
  3. 国にかかわらず、ビジネスが成功するためには最高のリーダーが存在することが必須である。 業界にコネのある日本人、というだけでは不十分です。従来の考えでは、業界経験が豊富でコネもある年配の日本人男性がリーダーとして相応しいと言われてきました。しかしこのアプローチが上手くいったケースは、一件も知りません。業界経験があるからといって、ビジネス上の洞察力やリーダーシップ能力があるとは限りません。顔の広さが自分の一番の武器だと考えているような人はしばしば、自分の知り合いに不利になるかもしれないようなことをビジネスのために行わなければならなくなった場合、しばしば躊躇してしまいます。つまり、自分の知り合いをビジネスより大事にしてしまうのです。
  4. 日本人に日本についての説明を受けたとしても、それがいつも正しいとは限らない。 日本人だからといって、日本におけるビジネスのエキスパートというわけではありません。そのような人たちからのアドバイスは、かなり割り引いて聞いた方が良いでしょう。日本人からのアドバイスをもし鵜呑みにしていれば、セブンイレブン、コストコ、ユニクロ、未シェラン、BMW、アディダス、ゴディバといった会社が日本市場に参入することはなかったでしょうし、まして日本で大成功を収めることもなかった筈です。
  5. 顧客の要求が高いのは日本では当たり前であり、また、資産でもある。 アディダスやミシェランは日本市場のための商品を開発しましたが、その品質が高かったため、結局世界中で販売することに成功しました。これはあなたにもできることです。
  6. 本国でのブランド力が海外でも通用するとは限らない。 あなたのビジネスが日本国外でいくら有名であっても、日本市場でのブランド開発にも投資をする準備をしておきましょう。
  7. 価値とは世界共通のもので、それは日本でも同じである。 画期的技術や素晴らしいサービスを兼ね備えた製品があれば、日本でもそれ以外の国でも成功するでしょう。フランスの会社であるミシェランは、最高級のタイヤを日本の自動車やトラックの製造会社、そして日本航空の飛行機用にも供給しています。
  8. 日本で最も成功しているビジネスは、システムに合わせるのではなく、それに抵抗しており、誰でもそうするべきである。 日本企業であるファーストリテイリング社は、日本の被服産業を根本から翻しました。ソフトバンクは一般消費者向けの電気通信サービスの定義を覆しました。現在ではセブン&アイ・ホールディングスとなったイトーヨーカドーは、セブンイレブンと共に、小売産業に大改革をもたらしました。スターバックスは、日本のコーヒーショップの概念を変えました。ホンダ技研はその昔、省庁からの指示を無視して、自動車業界に参入しました。あなたにはどのような抵抗ができるでしょうか。
  9. まず大切なところに投資をしさえすれば、日本市場に足場を築くことは他の市場と比べて難しいということはない。 上記のポイントはどれも、日本という言葉をどこの国に置き換えても通用します。
日本市場に参入する予定があれば、これらの重要なポイントを考慮すべし。 Click To Tweet

日本の企業文化が芯まで腐敗しているというのは間違いである

エクイファクスやウェルズ・ファーゴ、バレアント、カントリーワイド・ファイナンシャルやワシントン・ミューチュアルがサブプライムローンの危機に関して悪名を馳せた時も、エンロンの不正が告発された時も、それがアメリカ企業文化が腐敗していることに起因しているなどと言った人は誰一人としていませんでした。それなのに、日本で企業の不正行為が発覚したら、それを日本企業文化に繋げようとする人が出てくるのは何故でしょう。

神戸製鋼所が、日本国内外の製造会社に供給する自社鉄鋼製品のデータ改ざんを行っていた、という事件が明るみになりました。似たような事件がここのところ日本で立て続けに起こっており、やはり日本の企業文化はすっかり腐敗してしまっているのではないか、という議論がまた頭をもたげているようです。アジア太平洋版のブルームバーグも10月11日の生テレビ番組Marketsでこの問題を取り上げ、私もその中でインタビューを受け、意見を求められました。

決まった「日本企業文化」などというものは存在しません。ですから日本企業文化を問題視するべきではありません。しかしながら、神戸製鋼の企業文化に大問題があることに間違いはありません。

神戸製鋼は日本の企業文化に則った日本の企業である、と見ていらっしゃる方も多いでしょう。しかし、全体に行き渡っている共通の日本企業文化など、ありません。ユニクロで知られているファーストリテイリング、サイバーダイン、ソフトバンク、無地ブランドの良品計画、そして日本航空などの会社は全て神戸鉄鋼と同じく日本の会社です。それにも関わらず、これらは全て神戸鉄鋼とは全然異なる企業文化を持っています。実際、ここに挙げた全ての企業には日本企業でありながら、それぞれ異なるユニークな企業文化があり、少なくとも私たちに見える範囲では、神戸鉄鋼が行ったような不正は働いていません。

不正、不法な行為を日本の企業文化のせいにするのは、日本で真っ当なビジネスを法に則って行い、世界に貢献している大半の企業に対して失礼なだけでなく、危険性をも含んでいます。それは問題の根本的な原因を無視しているわけですから。本当の原因を理解することなしに問題を解決することはできません。問題を日本の企業文化のせいにしてしまえば、それが身代わりの理由となり、「仕方ない」で済まされてしまう言い訳となってしまうのです。日本の文化を一人の力で変えるなどということは無理ですね。企業のリーダーが自社で起こった不正を日本の企業文化のせいにするなどというのは、自分自身のリーダーとしての責任を放棄する最悪のやり方です。

国が企業文化を形成するわけではない。それはリーダーがやること(あるいはやり損ねること)である。 Click To Tweet国が企業文化を形成するわけではありません。それはリーダーが造るもの、もしくはリーダーがちゃんとやらないせいでできてしまうものです。神戸鉄鋼やその他の企業で起こった不正を理解したいのであれば、その企業のリーダーからスタッフレベルの社員に到るまで、その態度について見てみるべきです。

私も以前、ある企業から同様の依頼を受けたことがあります。そのエンジニアリング企業のCEOから電話をもらい、「多々起こっている重大事故の原因となったと考えられるのは安全確認手順がちゃんと守られなかったからと考えられるが、その根本的な原因はどこにあるかを調べて欲しい」と頼まれたのです。このCEOの方は私が調査を開始する前から、問題の原因は現場スタッフにあると考えていました。しかし私の調査で明らかになったのは、マネージャーが業績を上げるために、安全手順を無視するよう、さりげなく、またある時は露骨にスタッフに圧力をかけていたということでした。このやり方は何十年も続けられてきており、下から上がってきた中間管理職の人々はそれが普通であると考えているような有様で、その多くはわかっていて共謀してさえいたのです。この考え方は上層マネージャーまで行き渡っていました。

これを指摘されると、CEOも上層役員達も、こういった不正は日本では当たり前で、利益を出すためには必要なものだ、と抵抗しました。このような言い訳が通用するわけがありません。実際、この企業が最近買収した日本のライバル社にはそのような不正は見られず、しかも利益を出していたのです。

このように日本の企業文化が言い訳に使われることはしばしばありますが、それが日本の企業の弊害の真の原因であることなど皆無です。原因は企業のリーダーがコントロールできる範囲にある何か別のものである筈です。国の文化と考えられることが理由でリーダーにはどうしようもできないことなどありません。ビジネスリーダーであれば誰でも、自分の望む企業文化を造ることができますし、またそうするべきなのです。たとえそれが国の文化に沿わないと思われるようなものであってもです。楽天のCEO三木谷浩史氏は、グローバルビジネス文化を社内で強制するために、社員が雇用され続ける条件として英語を身に付けることを要求しました。これは、終身雇用が当たり前とされ、外国語を苦手とする人が多いことが有名な日本では考えられないことです。日本マクドナルドのCEOサラ・カサノバ氏は、あるスタッフが直属の上司に素晴らしいアイディアを何度も拒絶された後に自分に直接掛け合ったきたことを評価し、彼女に改革プロジェクトを任せるなど、イノベーションに関してはそれまで重視されていた階級を取っ払ってフラットな企業を強要するといったことを行い、傾きかけていた同社を4年で立ち直しました。日本航空のCEO稲盛和夫氏もまた、日本の企業の変革を見事に行った経営者です。稲盛氏は社員全員に仏教に基づいたビジネス哲学を要求し、それは関連クラスをとることを義務とするなどといったものさえ含まれていました。彼の考えでは、社員はサラリーマンの美学の象徴とされていた自己犠牲、謙虚さなどを重要とするのではなく、何よりも幸せであるべきだとという強い考えを持っていたのです。ゴディバジャパンのCEO、ジェローム・シュシャン氏は日本の弓道に基づいたビジネス哲学を社内に取り入れています。それはポイントを取るにはターゲットに当てるだけでは不十分であり、正しい姿勢を保つことも必要である、という考え方です。神戸鉄鋼との大きな違いは、ビジネス上の利益を出しても、その姿勢が正しくなければゴディバでは許されない、という点です。弓道ほど日本的なものが他にあるでしょうか。ここに挙げたリーダーの誰一人として、自分の会社に自分の求めている企業文化を作り上げる上で、典型的な日本の企業文化の概念などを気にした人はおらず、それでも皆、素晴らしい成功を収めています。

しかし、三木谷氏、カサノバ氏、稲盛氏、そしてシュシャン氏が行ったように、ビジネス実績を上げるために企業文化を取り入れることと、違法、不正なやり方を無くすために文化リフォームを行うことは別物です。企業文化を創り出す場合は、リーダーが変革を導くことができます。しかし後者の場合、リーダーが信頼を得て改革を推進することはできません。単に新しい宗教を見つけたので最初からやり直したい、などと言っても無理なのです。不正があった場合に真の改革を行いたいのであれば、リーダーはもちろん、その不正に関わっていた中間管理職レベルの人たちも総入れ替えされるべきです。

神戸鉄鋼にとって、これは受け入れがたいことでしょう。これまでにデータ改ざんは10年以上行われてきたこと、そしてそれは社内の限られた部門以外でも行われてきたことが明らかになっています。私が調査を行った会社と同様、昇進を繰り返して今の地位に至ったマネージャーの多くが不正について少なくとも気づいていたことや、共謀さえしていたことは想像に難くないですし、CEOの川崎博也氏の耳に届いていたこともあり得ると思われます。神戸製鋼には、ごまかしをすることでビジネスを成功させるような方法をとってきた何代にもわたる中間管理職の人々がいる可能性も高いでしょう。例えば、スポーツとして自転車をやっている人が、ランス・アームストロングに師事したいと思うでしょうか。神戸製鋼でも、不正を行ったマネージャー達を尊敬し、彼らのもとで学びたいと思う社員がいると思いますか。あなたがCEOであれば、社員をそのようなマネージャーの下で働かせたいですか。社内の最高の人材を失いたいのであれば、凡庸な社員を甘やかせば良いのです。

神戸製鋼の声明によると、問題の製品のスペックは正しくはなかったけれども、まず安全性に問題はなく、事故を起こすようなことはない筈だとのこと。マネージャー達の何人が、この内容を言い訳に使って不正に加担していたのだろうと考えると、ぞっとします。神戸製鋼の現在のトップ達がこのような内容の声明が受け容れられると考えていること自体からも、彼らの傲慢さ、先見の明のなさが感じられます。過去10年間に起こった事故について、原因を究明するために調査のし直しが必要となるものも出てくるでしょう。上記の声明を出すことを認めるような現在のリーダー達に、会社の改革を任せることができると思いますか。

富士フィルム、東芝、タカタ、三菱自動車、日産自動車と、日本ではここのところ立て続けに企業における事件が明るみになり、そのせいで日本自体に問題があるのではないかと考えられるきらいがあるようです。しかし、見る目を変えれば、日本が正しいことを行っているからこそこういった問題が浮上してきた可能性もあるとも思えないでしょうか。私たちがこのようなニュースを目にするようになった理由は、企業の透明性が上がってきたり、不正に対する許容が認められなくなったり、ビジネスリーダーや彼らの企業の社会への貢献度がより多く求められるようになったからとも考えられませんか。確かに日本の管理規制にはまだまだ問題があるかもしれませんが、世界的にも、企業やそれをリードする人たちに求められる最低の態度、行動様式の基準のは世界的にも一致してきたように思われます。特急列車アセラエクスプレスがニューヨークのペンシルベニア駅を25分遅れて出発すると、乗客はブツブツ言いますが、ニュースになどなりません。でももし日本で新幹線が東京駅を25分遅れて出発したとなると、日本では大きなニュースとして取り上げられるのです。だからと言って、日本の高速列車で起こるような問題がアメリカでは起こることがない、という訳ではありませんよね。

では、この先、企業における不正を無くす、あるいは少なくとも減少させるためには、どうすれば良いのでしょうか。日本の企業不正の根にあるのは政府による規制が緩いということであり、その規制をもっときつくすれば不正は減る、という味方があり、私も政府規制を改善する必要があるという点には賛成です。しかし、規制は不正の大元の原因ではありません。逆に不正を取り締まるための最後の砦として存在するものです。考えてもみてください。アメリカもドイツも厳しい規制を強いていますが、それでもウェルズ・ファーゴやフォルクスワーゲンの不正を止めることはできませんでした。規制レベルをどれだけ上げたとしても、不正というものはなくならないのです。

企業不正問題を解決できるのは、規制の強さではありません。それはリーダーシップの強さであり、さらに特定すると、ビジネスリーダーの人格の強さと言えます。ここで私が言う人格とは、たとえすぐに何かしらのペナルティがあることが見えていても、またそのペナルティがどれだけ大変なものかとわかっていても、自分の信じた道を貫く意志のことです。例をあげましょう。オリンパス社のCEOマイケル・ウッドフォード氏は、自分自身にすぐに火の粉が降りかかることがわかっていながら、社内での不正を発見してすぐにそれを公にしました。セールスを捏造することを拒んだり、問題を公にしようとしたウェルズ・ファーゴの社員の多くは、職を失っただけでなく、履歴書に汚点ができてしまったことで金融業界で新たな仕事を得ることがほぼ不可能な状態に陥らされました。このような自分が正しいと思ったことを貫ける不屈の精神は、人格の強さを表していると言えるでしょう。

将来ビジネスのリーダーシップ能力を強化できる人とは、現在のビジネスリーダーだけです。リーダーとは訓練して育てられるものではありません。彼らは自分の上にいるリーダーから学ぶことによって、時間をかけて成長するのです。私が知っている中でも成功しているビジネスのリーダー達は、自社の企業文化の中に、次世代リーダーを育成していくために、二つの面を取り入れています。一つ目は、失敗は学習の機会として捉えるということ。良いアイディアはそれが例えうまくいかなくとも評価されます。それはつまりビジネスで結果をだすと同じくらい正しい姿勢が重要と見なされているということなのです。こうすることで失敗はなんとしてでも避けるべきこと(例えば目の前の失敗や罰を避けるためにデータを改ざんする、など)と言う考えが無くなります。代わりに失敗はビジネスを成功させる上で起こって当たり前のもの、と見られるのです。

二つ目は、いくら影響が小さいものであれ、不正、違法な行動は、絶対に許されない、ということ。例えば、トップの営業担当者が個人的に利益を得るため経費を水増しして請求したりすれば、即解雇となります。そうすることで企業内の不正行為を根元から断つことになるだけではなく、その営業担当者の上に立つマネージャーの人格を強くすることにもなります。

トップ営業マンを不正行為のために解雇する羽目になったマネージャーの方々は、よく売上が落ちたり、顧客との関係にヒビが入ったり、といったことを心配します。人格が強くないマネージャーほど解雇をためらい、不正行為を多めに見て、その結果周りの社員に、この会社では不正行為をしても大丈夫、という考えを受け付けてしまいます。このような社員がいずれ昇格して部下を持つマネージャーになったら、どのような行動をとると思いますか。

あなたがビジネスリーダーであるのなら、自分の描く企業文化を作り上げるために何を強要していますか。あなたのビジネスの未来のリーダーの素晴らしさは、今、あなたが創り上げている企業文化が左右するのです。またその文化が、神戸製鋼やその他の企業に起こってしまった問題が自社に起こることを回避する助けともなるかもしれません。

さて、神戸製鋼はこれからどうなるのでしょうか。神戸製鋼の役員達はこれから困難な決断を下す必要があります。もし神戸製鋼が、今回の不正に加担していたリーダーを全て解雇し、新しいリーダーが強い人格を育むような企業文化を創り上げることに取り組むのであれば、私は彼らの株を買います。そういったことさえもできないのであれば、売り払ってしまうでしょう。

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スティーブン・ブライスタインは、東京をベースとしたコンサルティング会社(株)レランサの代表取締役社長である。最新著書は、Rapid Organizational Change (Wiley & Sons, 2017)。

インセンティブに効果はない

もし結果を出せばもっと報奨金を支払う、と言われたら、あなたは自分のやり方を変えますか。

過去、この質問を成功されているCEOの方々に何度もしましたが、彼らの答えはいつでも”NO”でした。あなたも同じように答えるのではないでしょうか。

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たとえ小さくとも、違反は大きな影響を及ぼすもの

違法あるいは非道徳的な行為はどんな場合でも許されるべきではありません。その影響が大してない時であってもです。例えばマネージャーが経費を水増し請求して余分を自分の懐に入れようとしていたのが発覚すれば、その金額がどんなに小さいものであっても解雇するのが当然です。それが業績の高いマネージャー(売り上げトップなど)であればそのような決断をするのは難しいでしょうが、それは正しい決断なのです。

間違ったことをしたことに対するコスト分析ではなく、そのマネージャーの判断力と指導力こそが大切なのですから。

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研究開発部を利用して営業を上げるのは、リソースの無駄遣いである

営業担当者が、自社研究開発部の価値の高いサービスを無償で提供することによって、商品を買ってもらおうとするケースは度々見られます。それは顧客がそのサービスの料金を喜んで支払うつもりの場合でも起こっているようです。

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キックスターターとスマートウォッチ「ペブル」の成功例:果たして日本でも通用するか

数ヶ月前、私は当時見たこともないばかりか、製品化もまだされておらず、聞いたこともないグループによって開発中であった腕時計に100ドル以上を払ってしまう、という経験をしました。正気には聞こえないでしょうね。でも実はこんな行動をとったのは私だけではなく、6万9千人を超える人たちも同じことをしたのです。その腕時計とは「ペブル」と名付けられたスマートウォッチで、キックスターターというクラウドファンディングのサービスを利用してその開発の為に集められた資金は、計1千万ドル以上という過去最高額を記録しました。(ある記事によると、最初は10万ドル程度を集めるのが目標だったとか。)

つい先週、その私がオーダーしたペブルが手元に届きました。見た目も良く、iPhoneと簡単に繋げることができます。もちろん自分がこんな素敵な製品を製品化する手助けをした中のひとりなんだと思うと、いい気分にもなります。ペブルとキックスターターはこのようなクールな消費者向け製品を市場に送り出す従来のやり方を改革したといえるでしょう。

pebble

過去20年で、日本の電気製品の魅力はかなり褪せてしまいました。ソニーやシャープ、パナソニックといった大手企業の勢いもすっかりなくなってしまったのが現状です。しかし私は、だからといって日本がクールな感覚を失い、かつてどんどん新技術を造り出していたあの素晴らしい能力をもなくしてしまったとは思っていません。ひょっとしたらキックスターターのようなクラウドファンディングや、ペブル・テクノロジー社を立ち上げたような人たちこそ、今の日本が停滞する電気製品業界を立ち直すために必要としているものかもしれないと考えます。日本人はもともと大人数が協力し合って素晴らしいことを達成する、という文化的な傾向があります。キックスターターのやり方などは、日本人にぴったりかもしれません。

唯一の疑問点は、日本社会が、キックスターターとペブルのケースでも見られたような、ある意味で図々しく、統一もとれていないように見えるビジネスのやり方を受け容れ、また日本政府もこれまでの日本社会では考えられなかったような資金集めの方法を認めるか、というところでしょう。こればかりは私にも予想がつきません。ただ言えるのは、もし日本製のかっこいいスマートウォッチを製品化するお手伝いができ、さらに最初に作られるモデルのひとつを自分のものにできるのであれば、私だったらよろこんで1万円くらい払うだろうということです。あなたもそうすると思いませんか。