社員にやる気を起こさせるには

よく私の日本のクライアントに「どうすれば社員にやる気を起こさせる事ができるのか」という質問を受けますが、これに対する答えは、意外なものである事が多くあります。

まず、人にやる気を起こさせる、という事自体、不可能です。自分でやる気を出すべきなのです。やる気とは自分の中からでてくるものであり、外からくるものではないからです。これは英語ではintrinsic motivation、つまり「内因性動機付け」と呼ばれ、モチベーションの中でも、最もパワフルなものです。

自分の中からやる気が出てくるのは、以下の3つの場合です。

  1. 自分の才能を活かして問題等に取り組む場合。これは肉体労働ではなく、知的労働の場合に特に当てはまります。人は困難な事をこなすことで満足感を得ます。私が知っている管理職の中には、社員に難しい仕事を与えるとやる気をなくすと信じて、わざとそういった仕事をあまりさせない方々がいますが、これは大きな間違いです。社員を甘やかすと、実はやる気を低下させる事になるからです。
  2. 自主性を持てる事。自主性を持てるとは、自分の仕事のゴールを達成する為にどうすればいいかを自分で決められるという事です。才能のある人の多くは、自主性を欲します。 私のクライアントの中でも最も成功している会社には、出勤を強制したり就労時間を規定したりしていないところがいくつかあります。ミーティングに出るのは必要とされていますが、それ以外では仕事上のゴールを達成するために、出社を強要する、ということはしていません。多くの社員は家で会社の仕事をこなしています。唯一課されているのは、ゴールを達成し、仕事は期日までに終わらせるということ。これらの会社には「プロセス指向」ではなく「原則指向」である、とこのやり方を説明しているところもあります。
  3. 本当の意味での権限を与えられる事。つまり自分の仕事の結果に影響を与え、その影響を自分で見る事ができるということです。 私の最も成功しているクライアントの中の一社では、社員の画期的なアイディアに対する責任と実行を、その社員に一任することを促しています。その会社では、わざと多くのマネージメントレベルからの承認の必要性も最小化しました。社員はアイディアが成功した場合はもちろん、結局失敗するかもしれないアイディアを試すという姿勢に対しての評価、報酬も受けます。

誰かから報酬をもらったり、強制をされる、とった、外的動機付けは役立つでしょうか。

やる気という事に関して言えば、金銭による報酬や経済的保証より、認められ、感謝されるということのほうが良い効果があります。単に部下や社員に「ありがとう。」「よくやった。」と言葉で言うことは、どのような金銭的報酬に比べ、さらに大きな献身、忠誠を生み出します。実際、日本文化では、他の人々の前で誠実な感謝の気持ちを示すことは、 西洋や他の東洋文化に比べ、より深い意味があり、また大きな効果があるのです。

一般に信じられている事とは異なり、金銭はやる気を起こさせるのにはそれほど役に立ちません。ある程度の経済的保証のレベルが得られた後は、ボーナスや昇給を提示する事で社員の態度を変える努力にはめったに効果がないのです。もっと良い仕事をしようという気がない人が、金銭的報酬をちらつかされたからといって態度を変えようとする事など、殆どありません。同時に、いつももっと良くなろうという思いで仕事をしている人であれば、金銭的報酬をもらえるもらえないに関わりなく、頑張ります。

実際、すでにやる気のある社員に金銭的報酬を提示すると逆効果になる事もあります。ボーナスや歩合制を導入する事で業績が実際に落ちてしまった営業会社の例もいくつもあります。優れた営業マンがやる気をなくし、忠誠心も減っていきました。その上、もともと業績の良くない営業マンのやる気にも変化がないままでした。 業績も落ちます。報酬の提示という行為が、良い業績を単に金銭的に評価されるものとしてしまい、やる気を落とさせてしまうのです。

同様に、終身雇用制や年功序列制といった日本的な仕事保証は、人に会社に加わってもらう際には効果があるかもしれませんが、これらだけで社員となった人たちに常に業績を上げるやる気を起こさせることは難しいといえます。

こういったシステムを排除してはどうか、と私が提案すると、日本の管理職の方々はよく驚かれます。「そんなことをすれば、社員がみんな辞めてしまう。」とおっしゃられるのです。

でも果たしてそうでしょうか。私はそうは思いません。もともと業績の良くない社員は、他の仕事が見つかるかどうかに不安を覚え、辞めないのではないでしょうか。また、業績の良い社員なら、現在の自分のポジションを維持することに不安はないでしょうし、もしそうでなければすでに他の会社に移っていると思います。私はこれまでに、終身雇用制や年功序列制の排除によって優れた社員が大量退社した、という話を聞いた事がありません。同時に、残念ながらこれらのシステムにしがみつくことで、二流社員ばかりになったり、才能のある人に逃げられた会社を多く見てきました。

労働力をやたら守ろうとしすぎると、結局会社の競争力をダウンさせる事に繋がるのです。

では、処罰を使ってやる気を起こさせる事はできるでしょうか。

減俸や降格など、社員を怖がらせたり彼らに無理強いを乞うような方法をちらつかせたり実行することで、態度を変えようという気にさせることは可能かもしれませんが、その効果は必ず短期的で効果も少ないといえます。私自身、処罰を受けた社員の業績が伸びたなどという話は一度も聞いた事がありません。

この方法をとることで失う物は多すぎます。社員の献身、忠誠心には悪影響がでます。処罰を受けた社員は、 会社の為に自分に課せられた仕事以上の事をするなどということが、まずなくなります。 場合によっては会社への報復を試み、捕まらないですむような方法があれば、見えない方法で会社にダメージを与えようともするでしょう。

それでは、会社内のモチベーションを上げるには、一体どのような事をすればよいのでしょうか。

  1. 社員が学び、成長できるような、やりがいのある仕事を与えること。失敗をしても良いが、その失敗から必ず学ぶことを求めましょう。
  2. 個々の才能を最大限に活かせる環境を与えること。社員が伸びるような課題を与えてください。
  3. 自主性を尊重しつつ、結果を出すという責任を持たせること。自主性をうまく活かすにおいて、責任を与えることは重要です。
  4. 終身雇用制と年功序列制を排除すること。これらのシステムは過去にはうまくいったかもしれませんが、現代にはあてはまらないものです。
  5. 業績を公的に評価する場をもうけ、全てのレベルのマネージャー達に非公式に良い業績を讃えるよう奨励すること。「ありがとう」という言葉が持つパワーを決して忘れないで下さい。
  6. 自分で仕事の結果に影響を及ぼせるような権限を与えること。承認の必要性はできるだけ排除、或いは最小化してください。

上記は社員にやる気を起こさせるアイディアのほんのいくつかにすみません。御社内のモチベーションを上げるにはどんなことができるか考えてみて下さい。