スティーブンのブログ

推定ではなく、価値を提案すること

JR新幹線の一等席はグリーン車と呼ばれています。私はフランスのTGVやアムトラックのアセラ・エクスプレスといった超特急列車にも乗った事がありますが、そのどれと比べても、グリーン車が一番乗り心地が良いと思います。JRは、いくつかの路線において、さらにその上を行く「グランクラス」という特別座席まで提供しています。しかし、このグランクラスの存在はほとんど知られていません。JRが故意に秘密にしているわけではないと思いますが、JRの社員を見ていると、秘密にしようとしているのではないかと考えさせられてしまいます。

私も先日、東京駅の券売機で軽井沢行きの乗車券を購入するまで、グランクラスなどというものがあることすら知りませんでした。単に一番高級なクラスの座席を購入しただけで、それがグリーン車でないことにも気が付きませんでした。実際に経験してみたグランクラスは素晴らしいもので、この先もできるだけ使用しようと心に決めました。JRがグランクラスのマーケティングをどのように行なっているのかは全然知りませんが、それが上手くいっているとは考えられません。軽井沢への行きも帰りも、グランクラスの車両の乗客は私一人だったのですから。

先週のこと、短い休みを利用して、妻と息子と共に金沢へ旅をしました。今回はグリーン車の乗車券を購入する際、券売機ではなく、JR社員のいるみどりの窓口を利用しました。いざ列車に乗ってみて驚いたのは、一番前の車両がグランクラスだったことです。もしみどりの窓口でグランクラスもあることを聞いていれば、グリーン車ではなくそちらを選んだでしょう。私にとっては悔しい経験でした。

その旅の途中、妻と息子にグランクラスがどのようなものを見せたかったので、一緒に覗きに行ってみました。車両への自動ドアが開き、その向こうに立っていたのは、グランクラス専用の素晴らしいユニフォームに身を包んだ、グランクラス乗客専属の二人の日本女性でした。ところがその車両には一人の乗客もいなかったのです。そう、誰一人として。これから乗ってくる人だとか、たまたま席を外している乗客がいた、というわけでもないと思います。

金沢の宿泊は、インターコンチネンタルホテルグループのウェブサイトから、最初にANAクラウンプラザホテルのデラックスルームを予約したのですが、そのサイトで支払いを済ませた時点で、「チェックインまでに、もしこのホテルにふたつあるプレミアム・スイートのうちのどちらかに空きが出たら、そちらにアップグレードも可能です。アップグレードをご希望になられますか。」という画面に変わりました。このメッセージを見るまで、私はANAクラウンプラザホテルにプレミアム・スイートがあることすら知りませんでした。そこですぐに申し込みました。

顧客はいつでも自分が欲しいものはわかっているのですが、それが存在することを単に知らない、ということもあるのです。ですからオプションを提案することには意味があります。

どのような時でも、コストを気にするより、価値の高いものを求める顧客はいるものである。そういった人々こそが最高の顧客である。仮説に基づいて判断するのではなく、価値を提案することの方が良いのは間違いない。 Click To Tweet

ここで私がいっているマーケティングとは、特に凝っていたり洗練されているようなもののことではありません。接客担当の人たちに営業させる必要もありません。より高い商品を売ってもらうための報償を作成したりなどということもしなくて良いのです。大概、顧客に簡単な質問をして付加価値を提案するだけで十分なのです。東京の有名ホテルのゼネラル・マネージャーに聞いた話ですが、単にラウンジの接客係に常に「お飲み物をもう一杯、いかがですか。」と聞いてもらうようにするだけで、収益を倍以上にできるのだそうです。

あなたのビジネスでも接客係のスタッフが普段からより高い価値を提案しているのであれば、それは素晴らしいことです。もしそこのところに確信がないのであれば、確かめてみましょう。最高の顧客からもらえるビジネスのうち、どの位を見逃しているかを考えることは、大切なことです。

JRも私からのビジネスチャンスを見逃してきたわけで、それは今から取り戻せるものではないのです。列車はすでに発車してしまったのですから。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください