スティーブンのブログ

Make your own era

自分自身の時代を築くこと

会社において一つの時代が過ぎてしまっても、大抵の場合はとても些細なことなので、あまり気にも止められることはありません。それは旅客機がゲートから離れ始めても、窓の外の景色をみていなければそのことを感じられないようなものです。誰かに「昔からこんな状態だったのですか。」と聞かれて、時代が変わったことに初めて気付かされます。

ある日本の化学製造業を営む会社でも、前時代のことは一握りの古い社員以外には、殆ど忘れ去られていました。ある時私はその会社の営業チームのメンバーに、ビジネスを成長させたいのであれば、現在彼らが牛耳っている業界以外でも見込み客を探すべきだ、と提案しました。この会社の製品には、様々な使用方法があったからです。

しかしこのチームの一致した答えは、私のアイディアあまりに単純過ぎ、実行などできるわけがない、というものでした。他の業界には見込み客など持っていないし、その業界用の製品知識など持っていないからだそうです。

彼らは、自分たちが専門家などというには程遠いと考えられる業界に切り込んでいくのは、あまりに無責任である、と主張しました。確かに彼らの言い分もわかります。

「日本では独特ですから。」と彼らは言いました。そして私を慰めるかのように、「その独特さというのは、アメリカ人であるあなたには分からなくて当たり前なんです。」と続け、米国で働いた経験がないにも関わらず、いかにも自分たちには全てがわかっている、という感じでこう言ったのです。「でも、あなたが提案してくれたことは、ここ日本では通用しません。」

「ここは日本なんですよ。それを忘れてはいけません。」と彼らは私に忠告してくれました。確かにその通りです。もし私が子供であれば、きっと彼らはしゃがんで私の頭をポンポン叩いてそういっただろうと思わされるような話し方でした。

そんな中私に賛同してくれたのは、ほんの数人のマネージャー達だけでした。

「まだ会社も社員も若くて根性があった頃は、他の業界でビジネスチャンスを探すことなど当たり前だったものだ。知り合いもつてもなければ、自分からそれを作り出していた。商品の専門知識が足りないと感じれば、自分からそれを勉強した。見込み客と話をすれば、彼らから色々勉強できたものだ。研究開発部の社員にもどんどんアドバイスを求めていた。」

このマネージャー達は実際にこういうことをした体験があったのです。故に、また同じことをやることがどうして不可能なんだ、というのが彼らの言い分でした。

しかし、それを理解できたのは、当時を知る50歳を超えたマネージャー達だけでした。自分自身が経験したことがあったからです。当時のことを話す人などいませんし、もちろんその時代に名前をつけたりすることもありませんでした。彼ら自身、ほとんど忘れていた過去だったのです。ですから40歳以下の社員になると、そのような働き方が可能であるなどということさえ、頭に浮かびませんでした。

これはまた別の企業の話ですが、そこの古株のマネージャー達は会社の初期のことを、迅速な改革、冒険、そしてリスクを冒すことに象徴される時代だったと語ります。ところがその後、いつしかこの会社は官僚的な企業へと変わってしまいました。スピードは落ち、リスクは回避するようになり、融通も効かなくなってしまったのです。一体どこの時点でそうなってしまったのか、それは誰にもわかりませんでした。

わかっているのはそういった状態が既にずいぶん続いてしまっていたということで、若い社員が知っているのはそんな状況だけでした。ですから彼らは会社の官僚主義は最初からずっと続いてきたものだと思っていたのです。それ以外の状況など、彼らには想像もつきませんでした。それは2次元に住む人が3次元の世界を想像できないようなものと言えるでしょう。

ある時代が忘れ去られてしまうと、現在の状況が過去にも存在したかのように思われてしまいます。未来だって同じようなものです。まるで四季がなくなって平坦な気候がずっと続くかのように。

先週、執り行われた徳仁陛下の即位の礼は、私に日本の元号制度について考えさせてくれました。日本では、新しい元号が始まる日とその名前が前もって決められます。新しい元号「令和」は海外では「幸先の良い平和」という意味であるなどと説明されていますが、そのようなありふれた言葉では、「令和」という名が示す日本の人々の思い、志、願望などを十分表すことはできません。

令和という時代の幕開けは、これが現代の日本人であるという強い思いを世界中に知らせるものです。未来の人々にこの時代がどのようなものであったかの推測を任せるだとか、自分たちだけに都合の良いように元号を設定したりなどということは全くありません。自分の時代は自分で名付け、設定し、作り出すもので、自分勝手な思いやエゴから生まれるものではありません。我々の時代は我々の遺産となり、いずれ未来の人々はそこから学び、彼ら自身の次の時代を作っていくのです。

我々は企業のリーダーとして、ビジョンを作り、戦略を設定し、自社の価値を広め、支持します。過去の歴史を振り返ることもあるかもしれません。しかしながら、自分の時代がどのようなものであるかを決めることを未来の人々に託してしまうこともありがちです。我々も自分たち以前の過去の時代を振り返ってそれを定義してしまうのと同じように。

しかし別のやり方もあります。上に挙げた日本の伝統を見て下さい。あなたもリーダーであるのなら、ご自分で自分の時代に名前をつけ、設定することができるのです。

リーダーであるのなら、自分で自分の時代を設定することができるはずだ。 Click To Tweet

あなたも、「これは私の時代だ。」と宣言して良いのです。時代があなたに与えた影響を未来の人々に分析させることを任せるなどという必要はありません。(未来の人々があなたの時代とそれ以外の時代の区別ができるとすれば、ですが。)

あなたに強い意志がある限り、あなたの時代は自分が決め、自分で創り出してください。


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