スティーブンのブログ

象徴主義の倫理

象徴主義そのものは本質的に悪いものではありません。しかしそれが行動を起こさないことを隠すために使われた場合は、非道徳かつ破壊的な結果をもたらすこととなります。

東京では、オフィスビルの上層階に上がる際に、よく身分証明書、もしくは名刺を2枚提示することを求められることがよくあります。 私はなぜ2つの名刺がパスポートや運転免許証の代わりになる見なされるのか分からないのですが、そこはまあ良いでしょう。問題なのは、このプロセスがビルのセキュリティがしっかりなされているという象徴的なショーに過ぎないという点です。それはビルのマネージメントのために行われていることで、ビルの中で働く人々のためではありません。私は、 米国の空港のセキュリティを通るときにも、その象徴にすぎないジェスチャーのためにどれだけのエネルギーや人材がつぎ込まれているのか、排除した方が良いプロセスもあるのではないか、と考えを巡らせます。

最近のことですが、某欧州会社の日本子会社の経営陣が、サプライヤーに請求書の額以上を払わせることで、親会社に隠れて任意に使える非公式資金を創出していたことが判明しました。そのやり方は社内に広がっており、また何年にもわたって行われていたといいます。それにもかかわらず、未だに誰も解雇されていないのだそうです。

親会社のリーダー達は、この詐欺行為の首謀者を解雇してしまったら、ビジネスを回していくマネージャーの数が足らなくなる、と考えたのです。そこで彼らが取った方法は、詐欺に関わったマネージャー達を降格させ、プロセス管理を強化し、社員をトレーニングするというものでした。神戸製鋼も、昨年企業不正が暴露された際に同様の対策を取りました。

しかしそのような措置は、詐欺を真剣に受け止めていると見せるために行われる象徴的なものに過ぎません。 企業の不正行為の原因が、個人の業績管理やコーポレートガバナンス、社員のトレーニングの不足にあることは、絶対ないのです。私はこうして降格させられたマネージャーの行動がその後改善したなどという例は一度も見たことはありません。コーポレートガバナンスが企業の初めての不正行為の解決策になることもなく、それが達成できるのは将来の不正行為防止の最後の砦となることだけです。いくらしっかりしたコーポレートガバナンスでも、どうしても不正をしたいという人々を阻むことはできないのですから。それに、だいたい金銭を横取りするために財務文書に関して嘘をつくことがいけないことである、とわかってもらうために、社員をトレーニングする必要があると思われますか。

不正を犯したマネージャーは解雇するべきです。どのような状況においてもです。考えてもみてください。そのようなマネージャーを解雇しなければ、不正に加担しなかった他の社員達はどう思うでしょうか。また、その会社を就職先に考えている優秀な人材の目にはどう映るでしょうか。あなただったら、何かしらの不正を働いたと知られているようなマネージャーのもとで働きたいと思いますか。そのようなマネージャーから教えを受けたいと思うでしょうか。次世代の中間管理職や役員の教育を、不正を犯したマネージャーに託せるとお考えですか。こういったことは、この先長期間に渡って起こりうるダメージの元となり得るのです。

また、経営陣を解雇すれば、ビジネスを運営するのに十分な人がいなくなる、というのは本当でしょうか。会社の経営に現在と同じ数のマネージャーが必要である可能性は低いと思います。親会社のリーダーの見た所、この子会社の生産性は他国の子会社に比べて劣っているとのことでした。彼ら親会社が真剣に生産性問題に取り組もうとさえすれば、向上の余地は十分あります。不正防止のための象徴的にすぎない対策は、改善のための大切な努力さえないものにしてしまうのです。

この親会社のリーダー達は象徴的対策しか取る道はない、と信じていました。しかし、私の経験からは、そのようなことは絶対ないと思います。

イノベーションはどのような時でも象徴主義に勝るものである。特に正しいことをやることが不可能であるような時には。 Click To Tweet

リーダシップが最も必要とされる時はこのような時なのです。それは間違いありません。


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