スティーブンのブログ

投影ではなく共感をすること

投影と共感は別物ですが、混同されることが良くあります。共感とは、人がどのように考えているかを理解する能力ですが、投影とは他人も自分と同じような見方をしていると仮定してしまうことです。共感しようとしている時に間違って投影の方をすることは避けるよう、気をつけなければなりません。

顧客会議のロールプレイを行った時のことですが、ある営業マネージャーのグループは、顧客との会話をする際、顧客が考えているのではないかと想定される文句に対する答えから入っていきました。例えばリードタイムが長すぎたり、コストが高すぎたり、在庫のセレクションの少なさ、といった問題点について、先手を打つかのように説明したわけです。これは顧客が彼らに対して抱いている評価より、彼らが彼ら自身に抱いている評価の方が低かったということを示しています。営業マネージャー達は顧客に共感しているつもりだったのでしょうが、実は自分達の自己認識の低さを顧客に投影していただけなのです。顧客はそのようなことを考えてもいなったというのに。

このような姿勢が、会社の売上、契約成立率、価格などに与える悪影響を想像してみてください。

とある欧州会社の製品開発プロセス担当のグローバルマネージャーが、日本の子会社のプロセス改革を監督していた時のことです。彼は全社で取り入られることになっていた基準を日本支社にも使うことを強要することを躊躇していました。自分が権威を示すと日本のマネージャーの面子を潰すことになり、ひいては将来彼と仕事をしていく上で差し支えが出てくるかもしれないと思い込んでいたからです。彼は文化に考慮し、日本のマネージャーに共感しているつもりになっていたのですが、実は自分の思い込みを投影していたにすぎません。実際、このプロセスのことについて尋ねられたその日本のマネージャーは、本社からの指示を希望している、と答えました。

彼は海外のやり方を参考にし、どのようにすればプロセスを改善できるかを知りたがっていたのです。面子など、全然関係ありません。

ある欧州会社の日本支社のCEOは、現地の製造業者を買収したいと考えていました。そしてその候補となる会社も見つかり、責任者同士がミーティングをする運びとなりました。その時点で彼が私に言ったのは、「この会社のオーナー兼社長は典型的な年配の日本人だから、保守的な人に違いないと思う。だからこの話にあまり興味を持ってくれているとは考えられないし、もしそうだったとしても話をまとめて契約まで持って行くにはかなりの時間がかかると考えられる。」という内容でした。彼は続けて言いました。「多分こうやって会うのも時間の無駄だろう。」

相手に何の質問もすることなく、これだけのことが彼にわかるわけはありません。この日本人CEOはひょっとしたら会社を売って引退したいと考えているかもしれませんし、彼の子供達にビジネスの後を継ぐのに必要な適性が欠けている可能性だってあります。大体この日本人CEOはミーティングを了承したわけですから、それだけの興味は持っているはずです。

私はそのミーティングの前に、欧州会社ののCEOにこれらの質問をしてみました。そのおかげで彼は先入観なしにミーティングに臨むことができ、質問もできました。そこでわかったのは、彼が最初に予想していたことは全て間違っていたということです。その後も彼は同様のやり方で他の企業とも多くのミーティングを行い、最終的に企業の買収に成功しました。もし彼が自分の相手に対する考えを投影し続けたままこのようなミーティングを行っていたら、結果はかなり違うものになっていたことは想像に難くありません。

投影とは危険なものである。根拠のない思い込みは、いつでも間違いを引き起こしやすい。 Click To Tweet

自分の理念だけで他の人の意図を理解できるほどの洞察力を持ったビジネスパーソンなどいません。共感をするためには、自分の分析ではなく、人間対人間のコミュニケーションが必要なのです。人工知能がうまくいかないことが頻繁にある理由はここにあります。人工知能は、共感が必要なのにも関わらず投影の方に100%基づいた技術だからです。

電子やその他の技術が、人間の共感による分析を代わりに行うことなどできません。他人の意図や認識、欲望を理解したいなら、質問をしてください。そしてそういう質問は堂々とすれば良いのです。

相手を手助けしたいという思いで質問すれば、それを責められることなど絶対にありません。


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