スティーブンのブログ

ブランドとはキャンペーンによって形作られるものではない

ブランドを形作るのはキャンペーンではなく、リーダーです。企業内の人間が考えているブランドを一般の人々に知らせるのがキャンペーンであり、それはリーダーであるあなたがそのブランドを気に入っているかどうかとは関係ありません。そしてそこに不一致があれば、たとえ何をやってもブランドキャンペーンは失敗に終わるでしょう。

私はブランドとは、名前やシンボルを見るだけで、特に他の説明がなくとも一定の価値観を感じさせてくれるもの、と考えています。ブランドを創り出したり変えたり、という作業は、何よりもまず企業内部で手をつけるべきで、社外で始められるべきではありません。私は、社員と話し、その行動を見るだけで、企業のブランドが何かを学ぶことができます。そこから感じ取れる価値は歴然としたものですから、消費者アンケートや市場調査など、必要ありません。

ブランディングは企業のリーダーにかかっています。以下は私からそんなリーダーの方々へのアドバイスです。

  1. ブランド再構築は、社員の行動の改革から行うことなしでは、消費者に対してのその成功は望めない。いくら保険会社が熱心に自社のブランドの信頼度を強調しても、人々は圧倒的に彼らを信用しないこともあります。例えば保険査定人に自分を信用してもらえていないような態度を取られたら、何故この保険会社を信用しなくてはならないんだ、と感じたりするでしょう。保険査定人は、クレームを提出されると、まず正当性が立証されるまではそれを認めず、細かく何から何までチェックをし、支払いを遅らせ、できるだけ支払額も小さいものにしようとします。あなたはご自分のブランドを信用してもらいたいと思っていますか。もし保険査定人が、クレームの不当性が証明されるまではそれを正当なものとして扱い、クライアントがもらい損ねた保険金が入ってくるように調整し、保険金の支払いもできるだけ早く行ったら、あなたのブランドの信頼度は変わると思われませんか。
  2. ブランドの影響力は、顧客と直接コンタクトからの影響以上のものではない。ホテルで最も重要な従業員は、最初に顧客と接するドアマンです。顧客がどのように迎えられるかは、ホテルのブランドが活きるかどうかに多大な影響を与えます。日本の新幹線では、車掌による定期的な一等席乗客の指定席券のチェックを取り止めました。指定席券無しで一等席に座る人をチェックするのは、高いお金を出して一等席に正当に座っている顧客に不快な思いをさせることに値しないとわかったからです。
  3. ブランドをいくら洗練されたものにしたとしても、指針はどのような場合でもプロセスをしのぐ。あるCEOが有名な5つ星のホテルに電話をして、役員チームのミーテイングのために朝食用の予約を入れようとしたのですが、そのホテルのレストランは予約を取らないことになっていたため、電話に出た従業員はそれを断りました。顧客の要望を叶えるのがホテルのモットーであるにも関わらず、です。費用とタイミングさえOKであれば問題はない筈なのです。代わりに個室での朝食会を提案することだって可能であったかもしれませんし、顧客へのサービスとして、コンシェルジェに頼んで近くのレストランを予約することくらいもできたでしょう。 指針は大切なものです。あなたも社員も、自社の指針をうまく説明できますか。
  4. ブランド戦略についてアドバイスすると同時に広告スペースを売ろうとするような代理店は避けること。往々にして利益相反が存在するため。ファイナンシャル・アドバイザーが金融商品の販売も行うと、そこには自然に利害の対立が発生します。ブランド戦略とアドバイスも同じことです。価値の高いアドバイスに対して多くの金銭を払うのに問題があるわけではありません。しかし、そのアドバイスに従ったメディアの購入は、別途に行われるべきです。
  5. 世界中でも最も強いと考えられるブランドは、業界や文化の決まりに従ったりしない。このことを否定するような人に耳を傾けないこと。アップルはアップルストアをデザインするにあたって、一般の社会通念に全て反することを行いました。失敗するに違いないという専門家達による予測にも関わらず、フィフス・アベニューに建てられたその店は、面積比で見ると、同じエリアの他のどの店舗よりも高い売り上げを誇っています。日本のコストコは、小さな家で暮らす日本の消費者達がまとめ買いをする訳はない、という専門家達の意見を無視して開業しましたが、蓋を開けてみると、どの店も毎週末には買い物客で賑わい、新しい店舗ができれば、メンバー登録をしたいという人々が長蛇の列を作る姿が見られます。世界でも有数のブランドは、他社と反対の行動を取り、大胆で、波を立てます。あなたのブランドもそうあるべきだと思いませんか。
  6. 力のあるブランドは国境をも越えて行くが、成功するには十分考え抜かれた戦略と努力が必要である。アメリカのアウトドアスポーツの小売店であるREIが、そのブランドが日本でも有名だからという事実に甘えて、日本市場に参入しても成功する、と考えたのは思い上がりでした。REI社は瞬く間に日本ビジネスから撤退し、戻ってくることもありませんでした。アディダスは日本市場シェア一位を誇りますが、それは彼らのブランドが世界中に知れ渡っているからという理由のせいではありません。アディダス・ジャパンは日本でのブランド開発、促進に多大な力を注ぎ、まずそれを社内から実践したのです。例えば日本市場のための日本ブランドの商品は、日本にある研究開発部で開発され、のちに世界中でも販売されます。アディダスは単なる海外ブランドの伝達者というわけではないのです。アディダス・ジャパンは世界中にある他のアディダス社と同じくらい、グローバルなブランドを作り上げており、そのことは社員も理解しています。
  7. 自社のブランドが市場でどう受け止められているかを知りたければ、社の営業スタッフに、あなたの会社で働いていることについてどう感じているか、聞いてみるとよい。企業のプロセスや文化は大切です。私は、仕事に満足していない社員から良いサービスを受けたことなど一度もありません。同様に、営業スタッフが労働環境に不満を抱いたり、社の製品が顧客のニーズに合っていないと感じていたり、カスタマーサポートが不十分だと思っていたり、営業方法が不適切であったり非道徳的であると感じていたり、そうでなくとも製品が顧客のためには役立たないと感じていれば、どんなに素晴らしいマーケティングや膨大な広報キャンペーンを行ったとしても、そのネガティブな気持ちはどうしてもブランドに影響していきます。逆に営業スタッフが自分たちが売る商品を愛し、それが顧客の役に立つと感じ、自分でも使ったり家族のために購入したりもし、顧客の役に立つことが一番大切というのが営業プロセスの基本にあると信じていれば、その熱意が伝わる筈なのです。
  8. コンテンツを作り出すことによるブランドの創造は、何らかの形で顧客の生活の質の向上に役立たねばならない。それ以外のことは雑音にすぎない。有名なドイツのカメラ製造業レイカ社はオンラインと印刷物の両方の媒体で雑誌を発行し、素晴らしい写真アートを紹介したり、写真コミュニティーのアーティストやプロから、彼らの考え方や働き方について語ってもらったりしています。ランニングウェアを作るサロモン社は、世界中の魅力的なロケーションで道を走るランナー達を描き、圧倒的な撮影技術を使ったオンライン視聴用の短いTVシリーズを作成しています。これらのブランドのファンであろうがなかろうが、写真やランニングが趣味であれば、こういったコンテンツには引き込まれずにはいられないでしょうし、もっと見たいと感じて何度も新しいコンテンツをチェックしようとすることと思います。あなたのブランドのコンテンツには魅力はありますか。そしてそれは人々に価値をもたらすものですか。それとも商品を売るために気を引こうとしている他の多くの企業の中で、単に目立とうとしているだけですか。
  9. 押し付けは自分を卑しめる結果を招く。反対する人たちへの理解を示すことこそが、尊敬を生み出すものである。顧客に押し付けがましい行為をすることは良くないし、自分に賛成してもらうために金銭を与えることはもっとひどいことです。社員を支持者に変えるというのは本質的に政治的な行動です。同じ水を飲むことで、自分の熱心さを証明しろというようなものです。人事部は企業文化の世話役、そして同時に思想の取り締まり係となります。それに対し、自由な思想を持つ大人達は、反対意見を述べることが許されます。本当に素晴らしいブランドは、ブランドではなく、顧客を一番大切に扱います。日本の高級眼鏡チェーン、パリミキの代表取締役会長、多根幹雄氏とランチをご一緒させて頂いた時に聞いた話ですが、パリミキの掲げる目標は、メガネをかける必要のある人々一人ひとりに幸せに感じてもらうことだそうです。彼らは日本メガネ産業のユニクロとも呼ばれているJINSの顧客を奪うことを目標にしたりはしていません。多根氏はJINSのビジネスは素晴らしいが、パリミキも素晴らしいビジネスをやっているとおっしゃっていました。単に別のビジネスというだけなのです。社員にせよ顧客にせよ、誰でも自分にとってどちらが最良か選ぶ自由を持っているのです。勝つのは顧客がついてきてくれることに自信を持っているリーダーなのです。
  10. 自分のブランドを一番良く伝えられるのはあなた。自分でそうなることを選択しさえすれば。あなたなしでは、全てのブランディングは技巧でしかありません。
ブランドの創造にはしっかり関わること。会社内での方向性がまとまっていなければ、外に向けてのキャンペーンにも殆ど意味はない。 Click To Tweet

この記事のオリジナル版はCampaign Asiaに掲載されました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください