スティーブンのブログ

ターゲットばかりに固執することの危険性

業績目標を達成するのに1番の方法は、それを忘れることです。業績を上げるやり方を改善することこそが大事なことなのですから。

ランナーがパフォーマンスの向上を目指す際、もし時間や距離といった目標に固執すると、フォームを改善することの大切さが見えなくなってしまう可能性があります。正しい走り方を習得することなしに目標とする時間や距離ばかり気にしていても、パフォーマンスが上がるわけではないので、意味はありません。例え目標を一度達成できたとしても、将来、また達成し続けられる可能性は低いですし、それ以上向上するだけの土台も殆どありません。

フォームがしっかりしていなければ、それ以上の向上は望めない。 Click To Tweet

企業勤めにおいて良く使われる主要業績評価指標やターゲットなどの泥沼は、同様にリーダー達を盲目にしてしまうきらいがあります。ある営業の上席副社長は、会社が販売している消費者向け商品の市場がどんどん弱気になってきている中、本社から要求されている日本での強気な売り上げ目標を社員に達成してもらうことがどれだけ必要かを、私に説明してくれたことがあります。この会社の小売流通は飽和状態だったため、この四半期の数字を上げるには無理のある方法をとってとにかく売るしかない、と彼女は考えていました。彼女も彼女のスタッフも、それが単に来期に売り上げする予定だった分を今期に持ってくることで今期の目標を何とか達成しようとしているにすぎないことを理解していたにも関わらず、です。

彼女は社員にこのプランを実行してもらうためには、次の社外会議でどのように話せば良いかを私に尋ねてきました。

私はどう答えたと思われますか。それは無理だ、と返事をしたのです。

例え目の前の問題を解決できたとしても、そのせいで数ヶ月先には今よりひどい状況になるのが目に見えている訳です。そんな中、喜んでそのようなプランを実行しようとする社員がいると思いますか。彼女にもそれはわかっていたのですが、それ以外の方法はない、と考えていました。彼女は仕事のできる人ですが、結果を出さねばならないというプレッシャーの中、業績評価指標やターゲットのせいで、物をクリアに見ることができなくなっていたのです。そこで私は彼女にこう言いました。

「目標も業績評価指標も気にするのはやめるべきです。もしあなたが同様のビジネスで同様の問題に直面している起業家だったとしたら、どうすると思いますか。同じようなアプローチをとりますか。」

「それはないですね。」というのが彼女の答えでした。

「では代わりにどうしますか。」と私は重ねて尋ねました。

彼女は少し黙って考えた後、自分の考えを口に出しました。

「そうですね、まずはトップ50%に入らない顧客に時間を割くことをやめさせます。注文は受け続けますが、彼らへの営業などののためにわざわざ時間を割くことはやめる、ということです。代わりにスタッフにはトップ50%の顧客に焦点を合わせてもらいます。そうすると売上の伸びにつながると思うんです。」

「いいですね。」と私。「他にもできることはありますか。」

「トップの顧客を対象としたマーケティングのサポートにもっと力を入れます。そうすることでマーケティングの予算を使って一番効率の良い結果を出せると思うからです。」

「素晴らしいと思いますよ。他には。」

「一番売れていない商品をやめてしまい、一番売れ行きの良い商品の方に力を入れます。」

「それもいいアイディアです。他にはどうでしょう。」

「営業スタッフもマネージャーも、現在のやり方を改善すれば、もっと良い結果が出せるのではないかと思います。ですから彼らの能力開発に投資しますね。」

私は「素晴らしい。他にもありますか。」 と更に聞いてみました。彼女が私の方を見たところで私はこう言いました。「ビジネスの新規開拓はどうでしょう。日本市場には、まだ連絡を全然とってもいない見込み顧客はいますか。」

「それはないですね。これまで日本の小売市場での我が社のリーチはずっととても上手くいっています。」と彼女はため息をつきました。

「そうですか。でも小売以外の顧客はどうですか。他にも対象とできるビジネスはありませんか。ビジネスを成長させるために取り入れられる可能性のあるようなビジネスモデルは他にもありませんか。」と私は聞き、3つのビジネスモデルのアイディアをシェアしました。それは彼女もそれ以外の社員も考えたこともないようなもので、興味をそそられた彼女はその内容を書き留めました。

私は「これらのビジネスモデルが上手くいくかどうかは、私にもわかりません。」と付け加えてからこう言いました。「でもこの短い時間の間にあなたと私とで良いアイディアが3つも出せるのであれば、あなたとスタッフで数時間、同じような話し合いをすれば、どんな結果が出せるでしょうね。」

多分良いアイディアはかなり出てくるだろうし、その中に実際に使えるアイディアもあるだろうと思う、と彼女は答えました。

「OK。では次に社外会議での案件について話しましょう。」と私は続けました。 「良い顧客とは言えないアカウントの内、どのアカウントに時間を割くのを止めるか。トップの顧客のうち、どのアカウントに担当スタッフを加えてテコ入れするか。トップのアカウントをサポートするためにどういったマーケティングを行うか。営業マネージャーやスタッフのどういった能力を伸ばせるか、またどのようにすればそれが可能となるか。今までのやり方と全然違っているものでも他にも考慮するべきようなビジネスモデルはあるか。こんなところでしょうか。」

彼女は私の言うことを書き留めながら、納得して首を縦に振っていました。

「それでは、この新しい案件はあなたのスタッフにやる気を起こさせると思いますか。少なくとも、先ほどおっしゃっていた目標達成のための唯一の方法、つまり今期に無理のあるような売上を出すことを納得してもらうというやり方に比べて、よりやる気が出る内容だと思いませんか。」彼女はそんな私の言葉に反論することはできませんでした。

この記事を読んでいる方々は、上記のアイディアは多くの人が思いつくような明白なものだと思われているだろうと想像しています。確かにその通りなのです。特に画期的な戦略と思われるようなアイディアはひとつもありません。私が提案したのは最後の一つだけで、それ以外は副社長が自分で思いついたものばかりです。彼女がそれができたのは、業績評価指標やターゲットを気にすることをやめ、正当なビジネスのやり方に焦点を当てたからです。

業績評価指標やターゲットに囚われすぎている企業は数多く存在します。あなたもビジネス目標に対するものと同じくらい、ビジネスのやり方にも注意を払っているかどうか、自問して頂きたいと思います。ビジネスのリーダーであれば、それを変えることはできるのですから。

日本の弓道競技では、西洋のアーチェリーとは異なり、ターゲットを捉えるだけではポイントをもらうことはできません。選手はそのフォームもちゃんとしていなくてはならないのです。このアプローチには深い教えが含まれています。成績をあげようとしているランナーの場合も、時間ばかり気にするのではなく、走るときのフォームを改善することに焦点を当てるべきです。そうすれば自然にタイムも改善されるのですから。


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