スティーブンのブログ

権限とエンパワーメントとは同義語ではない

エンパワーメントとは、息をすることと同じく、何か普通ではないことが起きるまでその大切さをなかなか意識することはありません。ビジネスにおいて受動的になってしまうという徴候は、エンパワーメント不足が理由で起こることがもっとも多いのです。

私はエンパワーメントのことを、仕事を通してビジネスの出す結果に影響を与える能力であると定義しています。マネージャーはしばしばエンパワーメントとは決定権を人に与えることと考えているようですが、権限だけでは不十分です。

真のエンパワーメントには、3つの要素が必要であり、権限はその一つに過ぎない。 Click To Tweet
  1. 仕事の結果生み出されるビジネスへの影響がどれだけ目に見えるか。たとえビジネス結果に影響を与えようとも、それが目に見えるものでなければ、影響などなかったかのように思われます。
  2. 時間、金銭、他人のノウハウ、技術、機器といったリソース
  3. そのリソースに関する権限と、それを行使する意思。最後の部分を強調しましたが、それは、権限を与えられてもそれを何らかの理由により行使しないマネージャーは、権限を持たないのと同じか、それよりひどいかもしれないからです。

例を挙げましょう。あるヨーロッパのファッション・ブランドを持つ企業でのことですが、そのCEOはシニアマネージャーのことを「我が社のビジネス内のそれぞれの部門のCEOである」と言い、彼らに対するエンパワーメントを行なっています。この会社のシニアマネージャー達は、戦略目的を達成するために与えられた予算を使う決定権を多岐に持ち、結果達成がはっきり目に見られるようにもなっています。また、別の企業では、コールセンターで働くカスタマー・サービスのエージェント達は社のガイドラインで定められている金額以下で収まる限り、顧客からのクレームの対処方法を決める権利を与えられています。迅速に対応すれば顧客に満足してもらうことに繋がりますし、クレームが膨らんでいく可能性を低くすることにもなります。私のクライアントである日本企業の営業部では、スタッフ個々のデスクはなく、ホットデスクと呼ばれるデスクの共有を導入しています。セールススタッフは目標達成の為の時間の使い方については自由に任されており、決まったミーティング以外でオフィスに来る必要はありません。

上記3つのエンパワーメントの要素のうちひとつでも欠けると、その逆のエンウィークンメントという結果になってしまいます。これは私の造語なのですが、この言葉の方が、一般にエンパワーメントの逆語として使われているディスエンパワーメントに権利の現象というニュアンスが感じられるのに比べ、企業の能力に与えるダメージをよりよく表していると思っています。

例えば、これはまた別の私のクライアント企業のケースですが、営業チームはマーケティング活動を計画する権利を与えられ、またその結果が見られるようになっていました。ところがマーケティングのリソースはその殆どがマーケティング部に与えられており、マーケティング部のアイディアは滅多に営業チームのアイディアと一致していないという状況でした。リソースなしでは、営業チームがエンパワーされることは無理です。ですので、顧客と向かい合っても実際に良い営業をする力を無くしていきました。

マーケティング部はリソースを持ち、それをどう使うかを決定する権利も持っていましたが、自分たちがもたらすビジネスの結果をはっきり見ることは殆どできませんでした。もちろん最終的な営業成績や顧客アンケートの結果はわかりますが、直接顧客と話してそのニーズや要求を理解しようとしたり、マーケティング活動の結果について顧客からダイレクトなフィードバックを聞いたりするマーケティングのマネージャーは殆どいませんでした。実際、営業スタッフが耳にしたのは、殆どネガティブなフィードバックばかりでした。営業がうまくいかなければ、それは営業スタッフのせいである、とマーケティング部は考えており、自分たちのせいであるなどとは思ってもいませんでした。ビジネスの結果がはっきり見えていない状況では、権利やリソースを効率的に使うことは難しいですし、全然使うことができないことさえあるのです。

エンパワーメントのどの要素が欠け落ちているかによって、3つのエンウィークンメント特有の考え方のどれかが見られます。それは欠乏感、孤立感、無力感の3つであり、このどれもビジネスにおける消極性に繋がります。下の図をご覧ください。

  1. 権限はあり結果も見られるが、リソースがない場合は、欠乏感を生む。 ビジネスの結果は見え、変化を起こすだけの権限も与えられているのに、そうするだけのリソースが不足している、つまり上記の例のマーケティング活動を計画する権限は持っている営業チームのような場合です。この場合、少しでもビジネスへの投資を必要とするようなアイディアを出したりすることはなくなり、またそのようなことがあってもあっさり却下してしまうでしょう。
  2. 権限とリソースはあるが、結果が見られない場合は、孤立感を生む。 孤立感で見られるのは、「それは営業ぶの問題であって、うちの問題ではない。」といったケースです。これがよく起こるのは、上記の例のマーケティング部のように、スタッフもマネージャーも直接顧客と接することが殆どなく、ビジネスの結果もはっきりわからないようなオフィスで仕事をしている部署です。
  3. ビジネス結果は見れれ、リソースもあるが、権限を与えられていない場合は、無力感を生む。 この場合、人々は何をする必要があるのかがクリアに見え、それを行うリソースも存在するのに、そのリソースを使う権限がないためにイライラし、皮肉っぽくなってくるのです。こう感じている人々がよく言うのが、「僕に聞かないでくれ。僕は単にここで仕事をこなしているだけなんだから。」という類のことです。

上の図の真ん中の4番だけが、本当のエンパワーメントを生み出すのです。

自分のビジネスにおいて、社員をエンパワーしたいとお考えですか。だったら権限以上のことを考えるべきです。時間でも金銭でも人でも機器でもそれ以外のものであっても、リソースを十分用意し、ビジネス結果もちゃんと見られるようにしておきましょう。オフィス業務をしている人々の場合はなおさらです。人々をエンパワーすれば、それは自分へのエンパワーメントとして還元されることがわかってくるでしょう。


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