BMWジャパン代表取締役社長のインタビューから学んだこと

去る9月22日、BMWジャパンの代表取締役社長 ペーター・クロンシュナーブル氏をゲストに迎えてのインタビューを行いました。このイベントは在日米国商工会議所と在日ドイツ商工会議所との共催で、高級感漂う東京の六本木ヒルズクラブの51階で開催され、100人以上の方々にご参加いただきました。

クロンシュナーブル氏は洞察力、創造力に優れた大変有能な国際ビジネスリーダーです。非公開のインタビューではあったのですが、そこから私が個人的に学んだ9つの点をシェアしたいと思います。

1. 社内の透明性は社員の熱意に火をつける。個々の部署が孤立している会社に比べ、部や課の間に透明性のある企業では、社員達が自分の部署以外にも可能なキャリアアップの機会を見つけることができる。透明性とは、部署間の協力や理解を促進するだけではなく、野心を抱かせるのにも役に立つのである。

2. 若手社員とランチをする。定期的に若手社員とざっくばらんな会話を持つことで、彼らの画期的なアイディアがリーダーに届くことが可能となるし、また、経営に関する洞察を得られる機会も生まれてくる。

3. 退職金は潔く支払う。業績の上がらないマネージャーに十分な退職金を払ってやめてもらうことは、そのまま雇い続けることに比べると、はるかに安上がりである。

4. 日本でも、法に則って人を解雇することは可能である。海外の場合と同じく、現地の法律や決まりに従いさえすれば良いのである。もし人事責任者がそれに反対すれば、彼(もしくは彼女)を解雇するべきである。

5. 変革は諦めないこと。企業に変化を持ち込もうとする時は、まずそれを妨げるようなことが出てくるものである。変革が困難だと思われるという理由だけで挫けてはならない。何か別のやり方を試してみるべきである。忍耐強く、同時に強い意志を持って取り組もう。

6. 企業改革に必要なのは、二人のサポーターのみ。どのような企業改革においても、社内にその改革に賛成し、協力してくれる人が社内に最低二人できれば、改革は成功する方向に向かうものである。

7. 改革は会社トップから。どのような変革であっても、まず企業トップの地位にあるリーダー達から導入していかねばならない。中間レベルのリーダー達がその改革に賛成していない状態でトップより下の社員達から改革を導入させても、成果は上がらないものである。いくら社員が乗り気であっても、直属の上司が受け容れる変革以上のものを社員達が取り入れられることはない。変革に抵抗する中間レベルのマネージャーは、上から言われた改革が部下達に広まることを阻止してしまうからである。私はこれを屈折層と呼んでいる。

8. 人は感情に基づいて購買決定を行う。他のサービスポイントやクォリティ、スムーズなアフターサービスなどといったものは、すでに感情に基づいて買うかどうかを決定した後に、それを正当化するために使われる要因にすぎない。商品に満足しているかどうか、というのが、顧客がリピーターになるかどうかの決め手である。

9. 和を重要視しすぎないこと。不和こそがビジネスを成長させる要因である。


日本の企業文化が芯まで腐敗しているというのは間違いである

エクイファクスやウェルズ・ファーゴ、バレアント、カントリーワイド・ファイナンシャルやワシントン・ミューチュアルがサブプライムローンの危機に関して悪名を馳せた時も、エンロンの不正が告発された時も、それがアメリカ企業文化が腐敗していることに起因しているなどと言った人は誰一人としていませんでした。それなのに、日本で企業の不正行為が発覚したら、それを日本企業文化に繋げようとする人が出てくるのは何故でしょう。

神戸製鋼所が、日本国内外の製造会社に供給する自社鉄鋼製品のデータ改ざんを行っていた、という事件が明るみになりました。似たような事件がここのところ日本で立て続けに起こっており、やはり日本の企業文化はすっかり腐敗してしまっているのではないか、という議論がまた頭をもたげているようです。アジア太平洋版のブルームバーグも10月11日の生テレビ番組Marketsでこの問題を取り上げ、私もその中でインタビューを受け、意見を求められました。

決まった「日本企業文化」などというものは存在しません。ですから日本企業文化を問題視するべきではありません。しかしながら、神戸製鋼の企業文化に大問題があることに間違いはありません。

神戸製鋼は日本の企業文化に則った日本の企業である、と見ていらっしゃる方も多いでしょう。しかし、全体に行き渡っている共通の日本企業文化など、ありません。ユニクロで知られているファーストリテイリング、サイバーダイン、ソフトバンク、無地ブランドの良品計画、そして日本航空などの会社は全て神戸鉄鋼と同じく日本の会社です。それにも関わらず、これらは全て神戸鉄鋼とは全然異なる企業文化を持っています。実際、ここに挙げた全ての企業には日本企業でありながら、それぞれ異なるユニークな企業文化があり、少なくとも私たちに見える範囲では、神戸鉄鋼が行ったような不正は働いていません。

不正、不法な行為を日本の企業文化のせいにするのは、日本で真っ当なビジネスを法に則って行い、世界に貢献している大半の企業に対して失礼なだけでなく、危険性をも含んでいます。それは問題の根本的な原因を無視しているわけですから。本当の原因を理解することなしに問題を解決することはできません。問題を日本の企業文化のせいにしてしまえば、それが身代わりの理由となり、「仕方ない」で済まされてしまう言い訳となってしまうのです。日本の文化を一人の力で変えるなどということは無理ですね。企業のリーダーが自社で起こった不正を日本の企業文化のせいにするなどというのは、自分自身のリーダーとしての責任を放棄する最悪のやり方です。

国が企業文化を形成するわけではない。それはリーダーがやること(あるいはやり損ねること)である。 Click To Tweet国が企業文化を形成するわけではありません。それはリーダーが造るもの、もしくはリーダーがちゃんとやらないせいでできてしまうものです。神戸鉄鋼やその他の企業で起こった不正を理解したいのであれば、その企業のリーダーからスタッフレベルの社員に到るまで、その態度について見てみるべきです。

私も以前、ある企業から同様の依頼を受けたことがあります。そのエンジニアリング企業のCEOから電話をもらい、「多々起こっている重大事故の原因となったと考えられるのは安全確認手順がちゃんと守られなかったからと考えられるが、その根本的な原因はどこにあるかを調べて欲しい」と頼まれたのです。このCEOの方は私が調査を開始する前から、問題の原因は現場スタッフにあると考えていました。しかし私の調査で明らかになったのは、マネージャーが業績を上げるために、安全手順を無視するよう、さりげなく、またある時は露骨にスタッフに圧力をかけていたということでした。このやり方は何十年も続けられてきており、下から上がってきた中間管理職の人々はそれが普通であると考えているような有様で、その多くはわかっていて共謀してさえいたのです。この考え方は上層マネージャーまで行き渡っていました。

これを指摘されると、CEOも上層役員達も、こういった不正は日本では当たり前で、利益を出すためには必要なものだ、と抵抗しました。このような言い訳が通用するわけがありません。実際、この企業が最近買収した日本のライバル社にはそのような不正は見られず、しかも利益を出していたのです。

このように日本の企業文化が言い訳に使われることはしばしばありますが、それが日本の企業の弊害の真の原因であることなど皆無です。原因は企業のリーダーがコントロールできる範囲にある何か別のものである筈です。国の文化と考えられることが理由でリーダーにはどうしようもできないことなどありません。ビジネスリーダーであれば誰でも、自分の望む企業文化を造ることができますし、またそうするべきなのです。たとえそれが国の文化に沿わないと思われるようなものであってもです。楽天のCEO三木谷浩史氏は、グローバルビジネス文化を社内で強制するために、社員が雇用され続ける条件として英語を身に付けることを要求しました。これは、終身雇用が当たり前とされ、外国語を苦手とする人が多いことが有名な日本では考えられないことです。日本マクドナルドのCEOサラ・カサノバ氏は、あるスタッフが直属の上司に素晴らしいアイディアを何度も拒絶された後に自分に直接掛け合ったきたことを評価し、彼女に改革プロジェクトを任せるなど、イノベーションに関してはそれまで重視されていた階級を取っ払ってフラットな企業を強要するといったことを行い、傾きかけていた同社を4年で立ち直しました。日本航空のCEO稲盛和夫氏もまた、日本の企業の変革を見事に行った経営者です。稲盛氏は社員全員に仏教に基づいたビジネス哲学を要求し、それは関連クラスをとることを義務とするなどといったものさえ含まれていました。彼の考えでは、社員はサラリーマンの美学の象徴とされていた自己犠牲、謙虚さなどを重要とするのではなく、何よりも幸せであるべきだとという強い考えを持っていたのです。ゴディバジャパンのCEO、ジェローム・シュシャン氏は日本の弓道に基づいたビジネス哲学を社内に取り入れています。それはポイントを取るにはターゲットに当てるだけでは不十分であり、正しい姿勢を保つことも必要である、という考え方です。神戸鉄鋼との大きな違いは、ビジネス上の利益を出しても、その姿勢が正しくなければゴディバでは許されない、という点です。弓道ほど日本的なものが他にあるでしょうか。ここに挙げたリーダーの誰一人として、自分の会社に自分の求めている企業文化を作り上げる上で、典型的な日本の企業文化の概念などを気にした人はおらず、それでも皆、素晴らしい成功を収めています。

しかし、三木谷氏、カサノバ氏、稲盛氏、そしてシュシャン氏が行ったように、ビジネス実績を上げるために企業文化を取り入れることと、違法、不正なやり方を無くすために文化リフォームを行うことは別物です。企業文化を創り出す場合は、リーダーが変革を導くことができます。しかし後者の場合、リーダーが信頼を得て改革を推進することはできません。単に新しい宗教を見つけたので最初からやり直したい、などと言っても無理なのです。不正があった場合に真の改革を行いたいのであれば、リーダーはもちろん、その不正に関わっていた中間管理職レベルの人たちも総入れ替えされるべきです。

神戸鉄鋼にとって、これは受け入れがたいことでしょう。これまでにデータ改ざんは10年以上行われてきたこと、そしてそれは社内の限られた部門以外でも行われてきたことが明らかになっています。私が調査を行った会社と同様、昇進を繰り返して今の地位に至ったマネージャーの多くが不正について少なくとも気づいていたことや、共謀さえしていたことは想像に難くないですし、CEOの川崎博也氏の耳に届いていたこともあり得ると思われます。神戸製鋼には、ごまかしをすることでビジネスを成功させるような方法をとってきた何代にもわたる中間管理職の人々がいる可能性も高いでしょう。例えば、スポーツとして自転車をやっている人が、ランス・アームストロングに師事したいと思うでしょうか。神戸製鋼でも、不正を行ったマネージャー達を尊敬し、彼らのもとで学びたいと思う社員がいると思いますか。あなたがCEOであれば、社員をそのようなマネージャーの下で働かせたいですか。社内の最高の人材を失いたいのであれば、凡庸な社員を甘やかせば良いのです。

神戸製鋼の声明によると、問題の製品のスペックは正しくはなかったけれども、まず安全性に問題はなく、事故を起こすようなことはない筈だとのこと。マネージャー達の何人が、この内容を言い訳に使って不正に加担していたのだろうと考えると、ぞっとします。神戸製鋼の現在のトップ達がこのような内容の声明が受け容れられると考えていること自体からも、彼らの傲慢さ、先見の明のなさが感じられます。過去10年間に起こった事故について、原因を究明するために調査のし直しが必要となるものも出てくるでしょう。上記の声明を出すことを認めるような現在のリーダー達に、会社の改革を任せることができると思いますか。

富士フィルム、東芝、タカタ、三菱自動車、日産自動車と、日本ではここのところ立て続けに企業における事件が明るみになり、そのせいで日本自体に問題があるのではないかと考えられるきらいがあるようです。しかし、見る目を変えれば、日本が正しいことを行っているからこそこういった問題が浮上してきた可能性もあるとも思えないでしょうか。私たちがこのようなニュースを目にするようになった理由は、企業の透明性が上がってきたり、不正に対する許容が認められなくなったり、ビジネスリーダーや彼らの企業の社会への貢献度がより多く求められるようになったからとも考えられませんか。確かに日本の管理規制にはまだまだ問題があるかもしれませんが、世界的にも、企業やそれをリードする人たちに求められる最低の態度、行動様式の基準のは世界的にも一致してきたように思われます。特急列車アセラエクスプレスがニューヨークのペンシルベニア駅を25分遅れて出発すると、乗客はブツブツ言いますが、ニュースになどなりません。でももし日本で新幹線が東京駅を25分遅れて出発したとなると、日本では大きなニュースとして取り上げられるのです。だからと言って、日本の高速列車で起こるような問題がアメリカでは起こることがない、という訳ではありませんよね。

では、この先、企業における不正を無くす、あるいは少なくとも減少させるためには、どうすれば良いのでしょうか。日本の企業不正の根にあるのは政府による規制が緩いということであり、その規制をもっときつくすれば不正は減る、という味方があり、私も政府規制を改善する必要があるという点には賛成です。しかし、規制は不正の大元の原因ではありません。逆に不正を取り締まるための最後の砦として存在するものです。考えてもみてください。アメリカもドイツも厳しい規制を強いていますが、それでもウェルズ・ファーゴやフォルクスワーゲンの不正を止めることはできませんでした。規制レベルをどれだけ上げたとしても、不正というものはなくならないのです。

企業不正問題を解決できるのは、規制の強さではありません。それはリーダーシップの強さであり、さらに特定すると、ビジネスリーダーの人格の強さと言えます。ここで私が言う人格とは、たとえすぐに何かしらのペナルティがあることが見えていても、またそのペナルティがどれだけ大変なものかとわかっていても、自分の信じた道を貫く意志のことです。例をあげましょう。オリンパス社のCEOマイケル・ウッドフォード氏は、自分自身にすぐに火の粉が降りかかることがわかっていながら、社内での不正を発見してすぐにそれを公にしました。セールスを捏造することを拒んだり、問題を公にしようとしたウェルズ・ファーゴの社員の多くは、職を失っただけでなく、履歴書に汚点ができてしまったことで金融業界で新たな仕事を得ることがほぼ不可能な状態に陥らされました。このような自分が正しいと思ったことを貫ける不屈の精神は、人格の強さを表していると言えるでしょう。

将来ビジネスのリーダーシップ能力を強化できる人とは、現在のビジネスリーダーだけです。リーダーとは訓練して育てられるものではありません。彼らは自分の上にいるリーダーから学ぶことによって、時間をかけて成長するのです。私が知っている中でも成功しているビジネスのリーダー達は、自社の企業文化の中に、次世代リーダーを育成していくために、二つの面を取り入れています。一つ目は、失敗は学習の機会として捉えるということ。良いアイディアはそれが例えうまくいかなくとも評価されます。それはつまりビジネスで結果をだすと同じくらい正しい姿勢が重要と見なされているということなのです。こうすることで失敗はなんとしてでも避けるべきこと(例えば目の前の失敗や罰を避けるためにデータを改ざんする、など)と言う考えが無くなります。代わりに失敗はビジネスを成功させる上で起こって当たり前のもの、と見られるのです。

二つ目は、いくら影響が小さいものであれ、不正、違法な行動は、絶対に許されない、ということ。例えば、トップの営業担当者が個人的に利益を得るため経費を水増しして請求したりすれば、即解雇となります。そうすることで企業内の不正行為を根元から断つことになるだけではなく、その営業担当者の上に立つマネージャーの人格を強くすることにもなります。

トップ営業マンを不正行為のために解雇する羽目になったマネージャーの方々は、よく売上が落ちたり、顧客との関係にヒビが入ったり、といったことを心配します。人格が強くないマネージャーほど解雇をためらい、不正行為を多めに見て、その結果周りの社員に、この会社では不正行為をしても大丈夫、という考えを受け付けてしまいます。このような社員がいずれ昇格して部下を持つマネージャーになったら、どのような行動をとると思いますか。

あなたがビジネスリーダーであるのなら、自分の描く企業文化を作り上げるために何を強要していますか。あなたのビジネスの未来のリーダーの素晴らしさは、今、あなたが創り上げている企業文化が左右するのです。またその文化が、神戸製鋼やその他の企業に起こってしまった問題が自社に起こることを回避する助けともなるかもしれません。

さて、神戸製鋼はこれからどうなるのでしょうか。神戸製鋼の役員達はこれから困難な決断を下す必要があります。もし神戸製鋼が、今回の不正に加担していたリーダーを全て解雇し、新しいリーダーが強い人格を育むような企業文化を創り上げることに取り組むのであれば、私は彼らの株を買います。そういったことさえもできないのであれば、売り払ってしまうでしょう。

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スティーブン・ブライスタインは、東京をベースとしたコンサルティング会社(株)レランサの代表取締役社長である。最新著書は、Rapid Organizational Change (Wiley & Sons, 2017)。


神戸製鋼と日本文化

ソフィー・カマルディン

さて、最近では神戸製鋼のスキャンダルが話題となっていますが、企業ガバナンスに大きな問題があるのではないか、という懸念も囁かれています。この問題について、東京を拠点とするコンサルティング企業、レランサのCEO、スティーブン・ブライスタン氏にお話を伺いたいと思います。

さて、スティーブさんは、急速なビジネス成長、組織変化の専門家でいらっしゃるので、お話しされたいことはたくさんあると思います。スティーブさんは日本企業の文化などというものは存在しない、と解説されていますが、これはどういう意味ですか?

スティーブン・ブライスタイン

言葉通りの意味です。私が上梓した「Rapid Organizational Change」という書籍で深く掘り下げた問題でもあります。私が言いたかったのは、日本企業の文化は一枚岩ではない、ということです。サイバーダインのような会社、あるいは、楽天のような会社には、三菱商事のような会社とは全く異なる企業文化があります。そして、どちらも日本企業なのです。

このことはアメリカ合衆国を始めとして、他の国にも当てはまります。グーグルのような企業にはシアーズ・ローバックのような企業とは全く異なる企業文化がありますが、どちらも大変アメリカ的な企業です。

ソフィー・カマルディン

そうすると、日本には持つべき企業文化がない、という印象も受けますが、リーダーシップの責任はどのように位置づけられるのでしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

詳しく検証する必要があるのは、各企業の内部で何が起こっているかということです。企業文化は各国の文化を凌駕するものです。ですから、リーダーは自分の会社で自分の好きな文化を育てることができます。私たちが注目し検証しなければならないのは、まさにこのような意味での企業文化です。

ソフィー・カマルディン

つまり、各企業には特有の企業文化があるので、日本全体としての企業文化を見つけるのは難しい、ということでしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

どの国にも、その国特有のパターンを見つけることはできますが、ある企業の経営を揺るがしている問題が…その問題の根がその国の文化にあると断言することはできません。もっと深いレベルで検証する必要があります。原因はいつでもその国の文化とは別のところにあります。そして、原因はいつでもリーダーがコントロールできる範囲内にあるのです。

ソフィー・カマルディン

ですが、日本企業に多くのスキャンダルが起きていることを考えると、日本の文化に問題があるとも考えられませんか?

リシャド・サラマト

この点については詳しく伺いたいのですが、スティーブさんは日本企業文化のようなものはないとおっしゃいましたが…では、なぜ、日本で多くの企業スキャンダルが発生するのでしょうか?タカタの問題、トヨタの問題、最近ではニッサンの問題、さらに、オリンパス、東芝と、日本企業のスキャンダルに関しては長いリストができています。日本の核となる中心部で何かが腐敗しているのでしょうか?それが問題なのでしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

問題の核心部分が日本の文化に関係していると断言することはできないと思います。日本の文化には、人々に不正や非合法な活動を促す要素はありません。そうではなく、現実に起きているスキャンダルには、リーダーシップの弱点に関して何らかのパターンがあるように思われます。先ほど申し上げましたように、こういう問題はいつでもリーダーシップの問題なのです。問題の核心部分は日本の文化ではありません。

また、アメリカ合衆国のような国でも、そして、ドイツのような国でさえ、ウェルズ・ファーゴやフォルクスワーゲンのような問題が起きています。そういう場合、問題の核心はアメリカ文化にあるとか、ドイツ文化にある、というような言い方は誰もしないでしょう。

リシャド・サラマト

ですが、気になるのはアメリカやドイツではこのような問題が少ないということです。日本企業に関しては、6社のスキャンダルがすぐに頭に浮かびました。それに、「臭いものには蓋」ということわざもあります。日本語の発音が上手くできなくてすみませんが、これは、醜聞を他に漏れないように隠す、という意味です。これは、私たちが今議論している会計問題の根幹に関わることです。鉄鋼や銅などのデータを偽り、人命を危険に晒すことは、はっきり言えば、法に触れるほどの職務怠慢です。

スティーブン・ブライスタイン

その通りです。そして、その同じゲストについてですが、彼はまた、人々がこのスキャンダルを否定的に捉えているか、肯定的に捉えているか、ということも話していました。つまり、私たちはこのように日本企業のスキャンダルを取り上げていますが、他の国の企業のスキャンダルについては取り上げません。メディアがこの問題を取り上げているのは、日本では衝撃的なスキャンダルだからです。他の国では、それほど衝撃的なスキャンダルにはなりません。

ソフィー・カマルディン

では、同様の問題はさらに脚光を浴びることになるのでしょうか?不正はもっと深いのでしょうか?このような問題では、…罰金を支払ったり、経営者が退陣したり、という結果を見てきました。けれども、日本企業が膿を出し切るには十分と言えるのでしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

そうですね、私が申し上げたいのは、スキャンダルの本当の原因を日本のような国の文化に求めることは大変危険だということなのです。文化というものは誰か一人の力で変えることはできません。結局、文化と共に生き、文化を許容するしかないのですが、文化の問題とは解決したり、最適化したりする類のものではないのです。問題をさらに深く掘り下げ、問題の根本を特定しなければなりませんが、問題の根本とは、文化ではなく、変えることができる何かなのです。

ソフィー・カマルディン

解説をありがとうございました、スティーブさん。お知らせの後も引き続き、レランサ社のスティーブ・ブライスタインさんにお話を伺います。

リシャド・サラマト

ブルームバーグ・マーケットを続けます。引き続き、スティーブン・ブライスタインさんと日本の企業文化について議論を続けたいと思います。ブライスタインさんは東京を拠点とするコンサルト企業、レランサのCEOを務めていらっしゃいます。 さて、スティーブンさん、企業文化の観点から何が問題となっているのかを議論してきましたが、私が先ほど挙げた企業はすべてスキャンダルを表面化させ、自分たちの間違いを認めました。このことは、企業文化を変化させたのでしょうか?企業の態度には変化が生まれましたか?それとも、これはアベノミクスの問題でしょうか? あるいは、マスコミの問題でしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

まあ、これらの問題については合理的に推測することができます。今、日本では、ビジネスでは何が適切であるか、どのようなビジネスパーソンが経営を行うべきか、という点について態度が変化しているのです。また、日本社会から何を求めるか、という点についても態度が変化しています。また、このような変化は地位の低いスタッフから上層部のリーダーまで全てのレベルで起きています。今日の経営リーダーには、以前の経営者よりも高い期待が寄せられていると思います。

ソフィー・カマルディン

さて、スティーブンさん、日本では規制はどのような役割を果たしていますか?2006年に公益通報者保護法が施行され、また、例えば、2015年にはコーポレートガバナンスコードが発効されました。さらに多くの規制が必要ですか?それとも、これで十分ですか?この種の規制に環境が慣れてくるのをサポートしているだけなのでしょうか?

スティーブン・ブライスタイン

すべての国でガバナンスのルールと規制を再検討する必要があると思いますが、それでも十分とは言えないでしょう。どんなに優れたガバナンスがあったとしても、不正行為は常に存在します。不正行為を本当になくしたいなら、リーダーシップの機能を改善させることに集中しなければなりません。日本では、経団連を通じて政府が規制の効果を上げることができます。

ソフィー・カマルディン

投資家や株主の行動主義を巻き込んだガバナンス改革の一部はすでに何らかの改善を実現していますが、他にも改善の余地はありますか?実際の改善を目にしていらっしゃいますか?

スティーブン・ブライスタインなにか

はし、少しは目にしています。もう少し改善のスピードを上げてほしいと思っていますが、私たちが見ているのは、企業行動がある種のグローバルスタンダードへ収束している過程なのではないかと思います。マーケットはより統合され、より国際的になっていますからね。

ソフィー・カマルディン

日本企業についていえば、この種の基準に関してグローバルガバナンスを満たしている企業をまだ見たことがないように思いますが、この問題に対処する個々のビジネスリーダーは、スティーブンさんから見ると、他に何をするべきだと思いますか?

スティーブン・ブライスタイン

そうですね、個々のビジネスリーダーに関しては、次の世代の経営者がこのような問題に煩わされないことを保証したいなら、リーダーたちは例を挙げて経営を行う必要があります。その特徴を上げるとすれば、便利でもないし、すぐに利益が上がるわけでもないことを実行することです。自分の会社の原則なのですから、何かに妥協する必要はないのです。

リシャド・サラマト

スティーブンさん…

スティーブン・ブライスタイン

リーダーが自分のビジネスでそのようなことを実行するほど… はい?

リシャド・サラマト

スティーブンさん、残り僅か30秒となってしまいました。日本で成功しているリーダーに共通している4つの実践原則は何でしょうか?手短にお願いします。

スティーブン・ブライスタイン

1つだけです。自分の会社に自分の文化を育てることです。

リシャド・サラマト

1つだけで十分ですね。ありがとうございました。スティーブンさん。良い一日をお過ごしください。東京を拠点にするコンサルタント企業、レランサのCEO、スティーブン・ブライスタインさんでした。


リーダーとそうでない人との違い

御社のスタッフには、リーダーになれると思われる人と、ちょっとリーダーには無理かと思われるような人の両方がいますか。

性格分析や仕事への取り組みに関する質問調査の結果でそれを判断することなどは避けるべきです。こういったテストは本当に正しいかどうかの証明はされておらず、重役レベルのリーダー候補者を占いで判断するのと同じようなものなのです。

リーダになるべき人材も、中間管理職落伍者の手先のような人材でも、一定パターンの態度を示すものである。 Click To Tweet

以下にその例を23点、挙げてみました。

リーダータイプの人                             中間管理職の手先タイプの人
決定事項やそれに関して取られたアクションを報告する。 まず上司からの許可を求めたり、指示が与えられるのを待ってから行動する。
全員での決断が必要な場合、オプション、リスク、考えられる予防方法や不測事態をリストアップし、その上で、提案を行う。 オプションの提示なし。一つのやり方のみを推す、もしくはそれがうまくいかないであろうということを説明するかのみである。そして膨大なデータを使って、その根拠を正当化しようとする。
可能と思われる投資利益率を金銭的に数値化することができ、また、それをその規模の順番で(何万ドル、何十万ドル、何百万ドル、など)述べ、それらの数値を導き出した方法の説明も行える。 ある投資の価値の規模を聞かれると、確実に答えを出すことができないと言い、予想さえしようとしない。
ホワイトボードを使い(或いはホワイトボードがない場合でも)、3分以内で戦略を説明することができる。 戦略の説明には、それを準備する時間と80ページのプレゼンテーションスライドを必要とする。
エキスパートとして、自分の視点を主張する。 膨大なデータを使って、自分の視点を前もって弁護しようとする。
上司からの質問も、会話の一部として冷静に受け止める。 上司からの質問は、口頭試験を受けているかのように答える。
人に好かれるに越したことはないが、それが仕事上必要なことではないと理解している。 人からどう思われているかが気になって仕方ない。
部下の態度、結果には、責任を持たせる。 部下が結果を出さないと、それを避難する。
必要であれば、良心の呵責を感じることなく、人を解雇する。 よっぽどの違法行為が行われた場合以外に人を解雇することは、非道徳的だと考えている。
データをいちいち見なくても、重要な財政上の数値はいつでも把握している。 ビジネスの財政上の状況を聞かれると、データを見ないとわからない。
業績の悪い社員を維持することによる悪影響を心配する。 業績の悪い社員を解雇したら、他の社員たちがどう感じるかを心配する。
差別化を行う。優れた者を優遇する。 道徳的であるべきという理由から全員を平等に扱うことが大事と考えている。もしくは自分に追従する者に甘くする。
人事がビジネスにとってベストと思われないような行動を取ろうとしたら、それをストップする。 人事を逃げ道に利用する。
会社に忠誠ではない。自分が成長する機会が失くなったと感じれば、躊躇することなく社を去る。 もし会社を辞めれば次の職を見つけられるかどうかを心配しており、今の会社に忠誠を誓っている。
アシスタントや代理人とは交渉を行わない。 直接決定権をもつ人に連絡をすれば、それをよく思わない人が出てくるのではないかということが気になってしまう。
営業という仕事が大切な職業だと思っており、セールスコールには全て答える。(たとえ「現在は興味はありません。」と言うことになっても。) 営業してくる人を迷惑と感じ、セールスコールはまず秘書にふるい分けをさせる。
オフィスの様子をしばしば実際に歩いて見て回る。 重要な仕事で多忙を極めているふりをして、デスクにずっと座っている。
収益を上げることを優先事項にする。 コスト削減を優先事項にする。
携帯にかかってきた電話を取ることはまずないが、常にすぐに返信する。 大切な案件の電話を逃さないよう、携帯への電話はちょくちょくでる。しかし出損なった電話への返信はしたりしなかったりである。
決断を下さないことはどんな決断より最悪だとわかっているので、素早く決断を行う。 どんな決断でも間違えれば自分の経歴に影響する可能性があるので、まず仮の(そして時には優柔不断な)決断を下す。
仕事の状況に関わらず、自分のための時間をとる。 いつも過労状態である。ビジネスのためには自分を犠牲にする。
多岐にわたる興味、趣味を持っており、様々なトピックについて賢明な会話ができる。 趣味などに費やす時間がないほど忙しい。仕事が一番大事である。
会話の中にしばしばユーモアを取り入れる。 ビジネスはビジネス。ユーモアなど必要ないと感じている。

あなたはどう思われますか。

自社のリーダー候補たちには、どのような態度を求めていらっしゃいますか。