やる気にさせるための3つの「R」

人に直接やる気を出させることはまず無理です。モチベーションというのは自分の中から生まれるものですから。それでもやる気を起こすための環境を整えてあげることは可能です。

そのためには、3つの「R」(責任、評価、報酬)に焦点を当てる必要があります。

Responsibility:責任
人は、楽な生き方に憧れているように見えますが、困難が立ちはだかったときこそ、やる気をだすものです。簡単な仕事を与えられれば、すぐに飽き、やる気を失います。逆に自分が持つ以上の能力を必要とするような仕事を与えられると、個人的にも成長しますし、一所懸命課題に立ち向かうものです。

Recognition:評価
努力や貢献度が認めてもらえれば、やはり嬉しいものですし、やる気をおこすのに大きな役割を果たします。「ありがとう。」の一言が持つパワーは決してあなどれません。社員のアンケートを見ても、金銭的見返りより、評価をしてもらうことの方が、よりやる気をおこす源となっているという結果が出ることが殆どです。

Reward:報酬
報酬、とくに金銭的な報酬も大切です。ただ、やる気を起こさせる要因としては、限界があることを覚えておいてください。すでに自分に相応で、生活に必要な報酬を得ていると感じている人に、さらに金銭的な報酬を与えることでやる気を出させようとして、うまくいくことはまずありませんし、下手すると、逆にやる気を無くさせる結果にもなりかねません。社員には公正な給料と、適切な昇給を与えて下さい。できる社員に相応のボーナスや昇給を与えることは、モチベーションを大きく上げ、払った金額を大きく上回るほどの計り知れない価値を、会社にもたらしてくれることもあります。逆に、報酬を渋ると、やる気の低下がもたらす業績低下につながることにもなりかねません。節約した金額より、モチベーションの低下によるコストの方が上回る可能性もあるわけです。

上記の3つの「R」は多くの社員に良い効果をもたらします。しかしながら、自分が成長することにあまり興味を持たないような社員がいるのも事実です。これには様々な理由が考えられますが、その殆どは、コントロール不可能なものです。そういう人たちにやる気を起こさせようと躍起になることはありません。成長したいと感じている多くの社員に焦点を当てたほうが、ずっとその努力が報われるような結果が出せるはずです。

3つの「R」を常に念頭においた会社文化を育成し、また実行しましょう。そうすれば社員の能力を開花し、ビジネスの成長を素晴らしいやり方で大きく後押しすることとなります。


英語はただの言語ではなく、ものの見方である

外資系も含め、日本にある企業の多くは、程度こそ違っても、社員の英語能力の向上を強く推進しています。そういった企業の社員達には、英語の文法、発音、限りのない語彙ニュアンスに苦労し、「今のポジションで英語圏の人と話す必要は殆ど必要ないのに、何故こんなに苦労をして英語を勉強しなければいけないのか。」と感じています。でもこういった意見はちょっと的外れかもしれません。外国語の学習には、その言葉を使ってコミュニケーションが取れるようになることと同じくらい、考え方を変えることも大切です。

グローバルな人間になる秘訣は、英語やそれ以外の外国語を学ぶことだけではありません。それ以上に、他国の人たちと共に仕事をし、彼らを理解できる能力が大切なのです。これはたとえ共通の言語がなくても同じこと。私もこれまで、TOEICで高得点を取り、英語の語彙も文法にも精通しているにも関わらず、実際に話してみると、うまくコミュニケーションが取れない日本の方々に、多く会ってきました。発音が悪いとか、言葉の使い方が間違っているという訳ではなく、国際人としての考え方が欠けているというのが、コミュニケーションがうまくいかない理由です。彼らは言おうとしていることを日本語から英語に直訳して話すのですが、それが英語圏の人間の話し方と全然違っているため、意味が伝わらないのです。

例えば、「この提案を却下すると言わないことが難しくないかどうか、我々には疑問に感じられるかもしれません。」という文は、実際のところ、どういう意味なのか考えてみてください。

こういった難解な表現は、日本人にとっても意味を掴みにくいものですが、それでも丁寧で間接的な柔らかい言い方として、一般的に使われています。しかし、これをそのまま英語に訳してしまうと、相手をイライラさせ、信頼を失うことにもなりかねません。

音楽を勉強する人の多くは、まず音楽界の巨匠にはなれません。でもだからと言って、音楽を学ぶ事に利点がないというわけではありませんね。外国語を学ぶことも同じです。それは外の世界に興味を持つということです。そしてその世界でのものの見方やコミュニケーションの取り方を模倣することで、その世界の人々の背景を分かった上で、彼らを理解することができるようになること。また、世界の人々と、臆することなく絆を育てていくということでもあります。

ですから、もしあなたが今、外国語の仕組みに頭を悩ませ、なんでこんなに大変なんだろうと感じているのなら、そこで諦めてしまわないでください。言葉以上のものの存在を考えてみるのです。外国語を学ぶことは、人間として成長し、つながりを広げることになり、それはビジネスにとっても個人的にも素晴らしいことなのですから。


対立においての和

「どうして私のチームは新しいアイディアをなかなか出してくれないんでしょうか。」

これは自社のチームからの提案や代替案をどんどん出して欲しいと考えているCEOの方々によく聞かれる質問です。日本社会では、新しい提案をすれば、自分の方が上司より物知りだと考えており、また上司の味方に同意していない、と思われることがあります。少なくとも横柄であると見られたり、ひどい場合は不服従のサインととられることさえあるのです。

しかし、実際、リーダーの立場にある人たちというのは、部下に良いアイディアや代替案があるのであれば、それを言って欲しいと考えているものです。もしそのアイディアが使えないものであっても、とにかく聞いてみて、それについて考える機会を持ちたいと思っています。

どうしてこのようなすれ違いが発生してしまうのでしょうか。その原因は、マネージャーたちがしばしば、「目標に対して異議を唱える」ということと「やり方について異議を唱える」ということとの違いが理解できないところにあります。目標に反対している場合は、「あなたの目標にはついていけない。」と言っているようなものですから、不服従とされる場合もあるでしょう。一方で、やり方に反論する、というのは別の話です。つまり、「あなたが達成しようとしていることには賛成しますが、そうするには別のもっといいやり方があるのではないかと思うのです。」と言っているわけですから。一般的にリーダーが求めているのは後者のようなインプットですね。

マネージャー達に違ったことをやりたいように思わせるには、基本的な考え方を変えさせることです。やり方に対して反対することと、ゴールに対して反対することとの違いについて率直に話し合うところから、まず始めてみませんか。アイディアが最終的に取り入れられようが成功しようが、とにかくアイディアや代替案を出すことが大切なのだ、ということを、奨励システムも使ってよく説明してください。

日本は和の国です。他人と対立することは避けたがりますし、とくにその相手が上司であればなおさらです。しかし実際には対立することによる和というものも存在するのです。社員にこれをわかってもらうことができれば、素晴らしい効果を期待できます。


金銭によるインセンティブに効果がない理由

多くのリーダーは、金銭的報酬があれば、社員の頑張ろうという気持ちが最も高まると考えていますが、実際、殆どの社員は、金銭は全然モチベーションの源とはならないと感じています。金銭によるインセンティブは、業績イコール取引、つまりどれだけ業績が上がれば幾らもらえる、という考え方を植えつけてしまいます。そしてそういった取引を受け入れるか、或いは拒否するかは、社員次第なのです。

よくできる社員というのは、提示された報酬などに関係なく、もともとの性格や能力のおかげで優秀なのです。私もこれまでに、ボーナスをもらえないから、などという理由で、優秀な社員がわざと仕事の手を抜いている姿など、見たことがありません。同様に、平凡な社員が、報酬を提示されたからといって、業績を上げたなどという話も聞いたことがありません。業績のぱっとしない社員が、「自分にはお金は十分あるし、正直、そんなに頑張る必要もないと思う。」などと言っているのを、聞いたことさえあります。ある経営幹部は、TOEICの点数が伸びなければかなり給料が減らされる、などということになるのは嫌だが、自分はそれと同じくらい英語が嫌いだ、と言っていました。

成長志向の高い人というのは、金銭より、挑戦によって突き動かされるものです。彼らは難しい課題にわざわざ取り組み、それによって学び、成長することを求めています。失敗をおそれず、また失敗は学びの一部と考えています。そういった見方をできる人たちは、常に業績も高いものです。

もし部下にモチベーションを与えたいのであれば、ひとりひとりに、現在の能力以上のものが求められるような、困難な課題を与えてあげましょう。余儀なく成長できるようにしてあげるのです。失敗は大目に見、同時にその同じ失敗を二度と起こさないように要求しましょう。こうすれば、できる社員により頑張ろうと感じさせることができます。

しかしながら、人によっては成長志向がないこともある、ということも覚えておいてください。人間的成長に興味のない社員は、困難な課題に背を向けてしまうかもしれません。これは個人個人の価値観によるもので、単に報酬をちらつかせたからといって変えられるようなものではありません。


リーダーとは育てるものであって、訓練するものではない

いわゆるリーダーシップの訓練というものは、役立ちません。リーダーシップ能力とは、すでにリーダーの地位にある人たちを、現在担っている役割内で(少人数のチームのリーダーであったも、国際企業のリーダーであっても)、コーチングやメンタリングを行うことによって伸びていくものです。学んだこともフィードバックもその場で実行されるべきです。

もしまだリーダーの役目を果たしたことのない社員のリーダーシップ能力を伸ばしたいのであれば、早めに取り掛かりましょう。そしてその際、リーダーシップ教育という観念は、捨ててください。代わりにふたつの事に焦点を合わせましょう。一つ目は自己責任を取らせること。そしてふたつめは、独立した主導権を持たせることです。自己責任が取れないようなリーダーには、他人に責任を与え、それを守らせることはできませんし、自分で考えて行動することを奨励してもらったり、またそれをうまくこなした経験のないリーダーは、どのようなリーダーの役割を与えられても、上司の許可を得てからでなければ行動しない傾向があるからです。

リーダーシップとはトレーニング・プロセスではありません。育成プロセスなのです。新卒社員の中でも、自己責任能力が強く、自分で考えて主導権を取れるような社員は、いずれリーダーとなる最高の候補と言えるのです。