為替ばかり気にするのはやめ、イノベーションによるリスク回避に努めましょう

多くの会社幹部の方たちは、円安を懸念していらっしゃいますが、私が昨日参加した為替予想説明会でもそういう方ばかりを目にしました。説明会で提示されたのはたくさんのチャートやグラフ、複雑な仮定、注意事項など。しかし結局、最後のまとめは、この先円高になるか、逆に円安になるか、両方の可能性があるということでした。

このようなことを言われて、会社の上層部はどうすればいいというのでしょうか。海外へ製造業務を移すべきでしょうか。それとも低コストの原料を探すべきなのでしょうか。この説明会で出されたのはそのような教科書通りの答えばかりでした。

この問題に対する私の答えは、為替ばかりを心配するのはやめるべき、ということです。為替は私たちがコントロールできるものではありません。私たちにできるのは為替の変動に対応することだけです。為替だけを念頭に置いていると、コスト削減・抑制といった考えに縛られてしまいます。そんなやり方だけで成功を収められるビジネスなど存在しません。

私のクライアントの中でも特に成功している会社は、頻繁に新製品やサービスを提供することで、為替リスクに対応しています。自社の製品・サービスの価値を常に向上させることに焦点を合わせているのです。新規で価値のあるものを提供すれば、現存製品の価格の上げ下げをするのではなく、新たな価格設定をすることが可能になります。

新製品・サービスを提供する頻度を増やすことが、為替リスクからビジネスを守る最高の方法なのです。また、イノベーションが自分でコントロールすることができるものである、ということも、このやり方の重要なポイントです。

残念なことに、ほとんどの会社は、できると思われるイノベーションを全然実行していません。多くの人々はそれが大変困難であったり、ラッキーでなければできないことと思っているようですが、そのようなことはありません。才能や使えるアイディアを持っているのに、「イノベーションとは自分の仕事ではなく、他の社員の仕事」と考えている従業員も多すぎます。エネルギー、焦点、時間をしっかり使いさえすれば、イノベーションは可能なのです。

ですから、未来を占おうとするのはストップしましょう。為替リスクに対応したら、そのことを心配し続けるのはやめて下さい。代わりにイノベーションの頻度を上げることを考えるのです。多分比較的簡単にできることはたくさんあるのではないでしょうか。そしてそれを実行することは、アナリストの預言や決まり切った教科書通りの解決方法より、格段に効果的に、為替リスクを回避するのに役立つはずです。


建国記念日によせて

1946年の2月11日にマッカーサー将軍は日本国憲法の原案を承認しました。神武天皇が即位したとされる2月11日は、日本の建国記念日として、祝日に指定されてもいます。

建国記念日は日本国民であることの意味や、この国の根本にある平和主義、民主主義、自由といった価値観について考える良い機会です。私たちは、ちょうど日本に様々な問題が立ちはだかっている時に、今年の建国記念日を迎えました。日本は今、中国からの圧力、中東で市民に対して振るわれている暴力、現代での自衛隊のあり方の見直しなどに直面しています。時折こうして、常に様々なことで混沌としている世界の中で、自分たちが支持しているもの、信じているものについて落ち着いて考えてみることは、我々はどこから来たのか、そしてこの先どこへ向かおうとしているのか、といったことを理解するのに役立ちます。

同様なことを自分のビジネスにおいても考えたことはありますか。ご自身、そしてあなたの会社で働く人たちは、会社が大切にしていることや信じていることについて、時折一緒に考えたりする機会を持っていますか。自分たちがどこから来たのか、そしてその価値観に沿っていけば、どこに向かって行くのか、など、熟考することはありますか。あなたの会社にも、こういったことを考える機会となる、「建国記念日」のような日はありますか。もしなければ、作られるべきかもしれませんね。

あなたにも、建国記念日おめでとう、という言葉を贈らせてください。

Photo: Rising Sun Over Ushiku Swamp on National Foundation Day, 2015, Ibaraki Prefecture, taken by me during my morning bike ride.

写真:2015年建国記念日に、茨城県牛久沼の上に登る朝日。(写真撮影:スティーブン・ブライスタイン。朝のサイクリング時に撮影。)


ピケティ騒動

トマ・ピケティ氏はフランスの経済学者かつ著名な知識人ですが、その彼が、つい最近、話題の著書「21世紀の資本」について語るため来日しました。ピケティ氏がアベノミクスの殆どのやり方に賛成していることは有名で、そのため、彼の来日は話題にのぼりました。彼が富の再分配について真剣に語り始めると、物議を醸している彼の研究に関しての様々な意見が飛び交う、というのはこれまでにもよくあったことです。

ピケティ氏の研究は優れたもので、問題視されるような内容をしっかり語っている点も尊敬できます。しかし、いくら大量、詳細な過去のデータであっても、それに基づいて我々人間がなにをすることが可能、あるいは不可能であるかを決めることは、私には受け容れられません。

証拠不十分というのは、欠けていることの証拠、というわけではありません。現在真実と考えられていることは、それが真実ではない、と分かった時点で真実ではなくなるのです。もしこの人間社会と経済が昔と大して変わっていない、というのであれば、いくら過去をさかのぼってデータを見たとしても、将来における改善、変化は不可能ということになります。でも、実際、私たちは変化してきました。変化は直線的に起こることではないかもしれませんが、確かに存在するのです。

主に、人間が経験することを把握するための自然摂理を理解することを目的に開発された科学的手法を他に当てはまる時には、気を付けなければなりません。惑星が自分で軌道を変えることはできませんが、人であれば、異なる円に軌道を移すことができます。過去にそうだからだといって、将来もそのままである、と信じて行動を起こすことは、成長を妨げるやり方です。社会学において自然摂理を定義しようとすることは、慎重に行われるべきです。

人、企業、社会、経済はどれをとっても、過去に考えられた限界を超えて成長、変化する可能性を秘めています。現在、この世界はピケティ氏の運命論など、全然必要としていないと、私は考えます。


ビリオネア起業家、ジム・トンプソン氏との昼食会で学んだこと

写真左よりスティーブン・ブライスタイン、ジム・トンプソン、トーマス・ショックリー

去る2月5日、クラウン・ワールドワイド社の創立者兼会長であるジム・トンプソン氏との昼食会をセットアップさせていただきました。在日米国商工会議所協賛で行われたこの会は、定員20人のところ、満席で行われました。

クラウン・ワールドワイドという名前を聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、物流管理、国外移転、文書保管といったエリアでは、世界でも最大の会社のひとつなのです。クラウン・ワールドワイド社のトラックは世界中の様々な都市で見受けられますので、ご覧になったことがあるかもしれませんね。黄色い王冠のマークの入った真っ赤なロゴが印象的です。

ジムは、若かりし頃、大学を卒業して世界中を旅して回った後、その中でも特に印象に残った国日本に住むことを決意します。実際に日本に引っ越したのは1963年。その時の所持金はたったの1000ドルで、最初の仕事は月給250ドルの引っ越し業でした。そして1965年までにはアメリカ軍からとれた仕事からのわずかな前払金を元手に、その仕事をちゃんとこなすインフラさえ設立する前に、横浜で起業します。そして1970年代の初頭に、クラウン・ワールドワイドは本社を香港に移しました。現在では世界の多くの国々で事業を展開し、5000人以上を雇用しています。フォーブス誌によると、トンプソン氏の純資産額は10億ドル以上だそうです。

この昼食会で、ジム・トンプソン氏より以下のようなことを学びました。

  1. 成長するためには、粘り強さは欠かせません。困難や失敗を経験した時でも、あきらめず持続することが大切です。恐怖心を克服できることは必須です。
  2. また同時に、ビジネスに見切りをつけるタイミングを理解することも大切です。素晴らしいアイディアであってもうまく実現できないものもあるのです。成長や革新の見込みのないビジネスであれば、ストップしましょう。
  3. 成長をコントロールするというのは大切なポイントです。成長にリスクはつきものですが、だからといってあまり危険を冒しすぎると、会社が潰れることにもなりかねません。多くのアイディアを試して、たとえそれらがうまくいかなくても、会社が存続できる状態を保てるようにしておきたいものです。
  4. 世界どこでも共通の会社文化を保持することも大切です。他社を買収する際には、大きい方の会社の文化を全社に広められるかどうか、確認しましょう。あまりにビジネスの社風が違う場合、うまくいかないこともあります。社風を変えられないビジネスは手放すべきです。
  5. ビジネスが成長するにつれ、起業家的な考え方や、仕事を率先して行ったり、堅実なリスクを負うといった風潮を維持することは、だんだん難しくなってきます。これらが廃れないように常に維持する努力をすることは、時間を追うごとに重要になってくることを覚えておいてください。
  6. 成功している起業家たちは、よく後になってから、経済的な理由を挙げて自分がとった行動について説明しますが、実際には情熱に突き動かされて物事を決定しています。どれだけ情熱を持っているかが、ビジネスを作り上げる上での恐怖心を克服し、必ず訪れる困難に立ち向かう際に必要になってきます。
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写真左よりスティーブン・ブライスタイン
ジム・トンプソン、トーマス・ショックリー

 

写真提供:在日米国商工会議所及びクラウン・ワールドワイド

 

 


西友・ウォルマートジャパンの最高経営責任者、スティーブ・デイカス氏とお会いして学んだこと

私主催、在日米国商工会議所と在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所の協賛で2月3日に行われたスティーブ・デイカス氏のインタビューは、70人以上が参加するという超満員のイベントとなりました。通常の”Conversation With…”イベントと同じく、直接ゲストに質問できる時間も十分に取り、やはりいつものように出席者は熱心に参加してくれました。

ここにスティーブ・デイカス氏との会話から学んだことをいくつか挙げてみます。

  1. 日本人は他国の国民と何の変わりもありません。良い仕事をこなせば、それを認めてもらい尊敬してもらいたいと思うのは、誰でも一緒です。そういう環境を作れば、人々は良い方向に向かうし、その結果、会社が変わっていくことも可能になるのです。古風な階級組織の文化があるところは、それがなかなかできません。下層からのアイディアは抑圧され、独自の考えを持ったりそれに従った行動をとるより、言われたことだけをこなすように訓練されてしまっているからです。そういった会社文化を変えれば、会社の改革ができる筈です。
  2. 何か決断が必要な際、市場データにのみ頼るのは止めましょう。もし日本人の親戚がいれば、その人だったらどうするか想像してみてごらんなさい。例えば私の場合は、「マサコ叔母さんだったらどうしたいだろう。」と考えたりするわけです。
  3. 変化しようとしない社員に辞めてもらうことを恐れる必要はありません。そういう人たちがいれば、まずリーダークラスから始めて下さい。会社の改革に乗り気でない中間〜上級管理職がいれば、改革などまず無理なのですから。
  4. 自分たちのビジネスとはどういうものか、そして何に向かって頑張っているのか、常に社員に直接語りかけましょう。
  5. 自分がリーダーに求めるような行動を、自分でもとるように心がけてください。
  6. 日本の会社では、部下を君付けで呼ぶ習慣がありますが、これはやめましょう。可愛く聞こえるわけでもない上に、尊敬の気持ちも込められているようでもありません。個人個人の重要さを軽視している感があります。子供を指しているかのような呼び方をされている社員に、良いアイディアを出したり率先して行動することを頼めますか。誰でも丁寧な「さん」付けで呼んであげるべきです。

過去の”Conversation With…”イベントではレノボ・ジャパンの最高責任者ロッド・ラピン氏や楽天市場の執行役員、ジェームズ・チェン氏などをお招きしました。次の”Conversation With…”は、6月3日にユニリーバ・ジャパンの最高責任者、フルヴィオ・グアルネリ氏を迎え開催される予定ですので、このチャンスをお見逃しなく。詳細は在日米国商工会議所ウェブサイトに掲載されます。

写真提供:在日米国商工会議所


腹芸、そして日本人とのコミュニケーションにおける落とし穴について

日本には腹芸という言葉がありますね。日本人でもそんな言葉は聞いたことがないという方々もいらっしゃるようですが、少なくともその意味するところは皆さん理解できるでしょう。腹芸とは、会話中に言葉にされない相手の本意を汲み取ること。また、言葉にはっきり出すことなく、それでも言いたいことを伝える事という意味もあります。

日本社会は殆ど単一民族社会と言えます。日本人は特有の歴史、文化、宗教と言葉を共有し、そのおかげで腹芸のようなはっきりしないコミュニケーション方法も可能になりました。日本では、腹芸は洗練され、知的で教養があり、また大人らしい会話とコミュニケーションの形と思われています。逆に単刀直入な話し方は不愛想で垢抜けしておらず、教養もなく子供っぽいと受け取られがちです。日本であからさまな話し方をするのは大体子供達だけです。

日本人は極端に慎重で間接的な話し方をすると感じられたことのある方は多いでしょう。日本人のコミュニケーションでは、衝突を避け、和を求める傾向があります。日本社会はこの和というものが大変重要なものと考えられており、「和」という漢字には「日本人」という意味さえあるくらいです。

腹芸とは異なり、英語での会話は直接的で明快であることが重要視されます。思ったことをそのまま口にし、また言葉にすることと考えることに裏腹がないことが良いこととされています。これはアメリカ社会が異なる背景、文化、歴史と宗教を持った多民族の集まりだからかもしれません。外では英語、家では母国語を話す家庭も多くあります。ですのでお互いを理解しようと思ったら、明確で簡潔な会話が必要にどうしても必要になってくるわけです。

語彙や文法を理解すれば英語でのコミュニケーションができるようになるとは限りません。日本人と英語で話したのに、相手が何を言いたいのか全然わからなかった、という経験はありませんか。それはその相手が英語ででも腹芸を行っていたためです。アメリカ人がそんなことをされると、ちょっとむかっときたり、相手を信頼できなくなったりするかもしれませんね。逆に日本人がアメリカ人に率直な喋り方をされると、やはり子供っぽく聴こえたり、傲慢にとらえられたり、更には喧嘩を売られているようにさえ感じることもあるのです。

腹芸をマスターすることは、日本人とのコミュニケーションをマスターするにおいて必要なことです。人と話すときには、話の内容だけではなく、その話し方を見て知らず知らず相手を評価していないかどうか、気をつけてみましょう。自分は丁寧で洗練され、誠実さのある話し方をしていると思っていても、相手にはまるで逆の印象を与えている可能性もあるのです。取引相手と商談する時も、社員と話している時でも、お互い有能、誠実で、よかれと思った行動をとっているにも関わらず、悪い印象を与えあっている可能性があることを覚えておきましょう。


あなたなら、魔法の第三の矢を何に使いますか?

私はタイトルにある質問を、お会いする社長の方々に聞くことにしています。アベノミクス「3本の矢」には、輸入規制の緩和から労働の自由化まで、はっきりした目的が据えられています。しかし安倍首相が直面している問題は、第三の矢がないということではなく、矢を放つための弓が欠けている実情なのです。日本国民は大して期待していないかもしれませんが、もし、安倍首相がこれをうまくやり遂げたらどうなるかを想像してみてください。願い事をするのなら、しっかり考えてからにしましょう。第三の矢(成長戦略)が的に見事に当たったら、ビジネスだけでなく、ご自分の家計にまでどのような影響がでるか考えたことがありますか。そしてその準備はできていますか。