性格と背景事情:人の行動を理解

先日、小規模な営業チームと、そのマネージャーをコーチングさせて頂いた時のことです。同じ会社の別のチームのいくつかをコーチングした時の経験に比べ、このチームのエネルギーのレベルが低いことを感じました。参加に意欲的でなく、質問も殆どなし。ロールプレイングの役を買って出る人はゼロでした。もしこのチームのことを何も知らなければ、ここで私は全員営業に向いていない人ばかりだ、と結論づけてしまったかもしれません。でも私はこのチームのことを知っていました。このセッションは数ヶ月に渡って計5回行われるセッションの三回目で、また、同じチームのメンバーと共に別のプロジェクトに関わったこともあったからです。何かがおかしい、と思いました。

そこで、セッション後、チームのリーダーに個人的に会い、私の懸念について尋ねてみました。そこで彼女が教えてくれたのはこのようなことでした。5人のチームメンバーのうちの一人はすでに3日後には結婚退職することになっており、また一人は来週、別の部門に嫌々移転させられる予定。さらに他の一人は長期海外出張中の先輩の分の仕事をひとりでこなすのに苦労している、というのです。

我々は他人の態度を判断する時、その背景を考えることなく、単純にその人の性格のせいにしてしまう傾向がある、ということを改めて考えさせられた出来事でした。背景にあるものが変われば、人の態度というのは良い方向にも悪い方向にも変化するものなのです。

組織変革の際、誰かの態度を見てその性格を決めつけようとしていることに気がついたら、そこでちょっと考えてみて下さい。その態度の背景にあるものを調べてみましょう。全ての態度が性格から来ているとは限らないのですから。


優れた社員の素質とは

今週は出張でフロリダのネープルズという所に来ています。ネープルズというのは海沿いの素敵な町で、なかなか良いビーチがあり、レストランも更に素晴らしい。 Café Lurcatというレストランもそのひとつで、今回そこで夕食をとりました。ハマチの刺身とアボカドの入ったサラダとマグロのたたきの胡麻和えは最高でしたが、それ以上に感動したのがサービスの質の高さです。私たちのテーブルを担当したウェイター、ジョンは細かい気遣いをしてくれ、愛想がとても良いだけではありませんでした。ワインリストにある全てのワインについて、一流のソムリエも顔負けの知識を持ち、レストランの台所で料理がどのように作られたか、魚はどこでとれた物であるか、ソースの調理法までも教えてくれました。ウェイターがこんなにいろいろ知っているというのは珍しい事です。どうやってそこまでの知識を得たのか、という私たちの質問に、彼は「自分で勉強したんです。」と答えました。ウェイターの仕事をするためにそこまでワインのことを知っておく必要はないというのに、より良いウェイターとしてお客様にサービスしたい、という一心で、そこまで学んだというのです。また彼は、同じ理由から、何時間もキッチンでシェフが料理をするのを観察し、いろいろ質問もして、レストランで使う食材や調理方法を全て理解する努力をしたのだそうです。ジョンがウェイターという仕事を愛し、よりウェイターとして成長する為に熱心に学ぼうとしている姿勢がわかりますね。我々の鑑です。

熱心さ、夢中になること、自分からやる気を起こすこと。これらが顧客を満足させることのできる、卓越した従業員をつくり出すのです。

御社の社員はどうでしょう。「卓越した従業員」と呼べるような人が何人いますか。あなたのスタッフは、自分の仕事が大好きで最高レベルの仕事をしたいという気持ちのみから、必要とされている以上に成長しようと努力していますか。また社員を雇う時に、そういった姿勢を持つ人を積極的に探していますか。


JALファーストクラス

今回、米国での実り多い仕事を成功裏に終えた後、私はJAL国際線のファーストクラスで帰国の途につきました。出張中はあまり良く眠れなかったためにかなりの疲れがたまっており、離陸してから1時間後、最初の食事が出される頃には、既に熟睡していました。フライトアテンダントに起こされた時には、もう着陸の1時間前。ぎりぎりでしたが、できれば着陸前に少しものが食べたいのですが、と尋ねてみました。するとそのフライトアテンダントは、あたかも私が眠っていた間に食べ損ねた食事をできるだけたくさん食べてもらおうとしているかのように、次から次へといろいろな物を運んできてくれました。その上、私の期待に添えなかったのではないか、と謝罪までするのです。私がファーストクラスのサービスを100%利用できなかったのは、決して彼女のせいではなく、単に私が眠り続けていたからなのに。逆に私にとっては、今回の空の旅は本当に快適なものでした。十分眠れたおかげで、着陸したときには疲れもすっかりとれていました。その上、ファーストクラスで後から後から出される食事やアルコール飲料を無制限に受け入れることなく、適度に楽しむこともできました。(現在私は体重を減らそうとしていて、特に出張中は気をつけようとしているのです。)

サービスを提供する場合、大切なのはサービスの量ではあく、顧客にとっての結果です。場合によっては、サービスの量を減らす方が顧客に喜ばれることさえあるのです。サービスができるからといって、それを顧客に押し付けるべきであると考える必要はありませんし、そう思い込むのはよくありません。顧客に喜んでもら得れれば、あなたは仕事を果たしたと考えてよいのです。


自分との約束に責任を持つ事

コンサルタントとして、私はマネージャーや経営者の方々を定期的にコーチングさせて頂いています。我々は全てコーチが必要だというのが私の考えです。スポーツ選手に見られるように、現在の能力以上の事を行い、挑戦や恐れに立ち向かうことでより向上していくという面で手助けをしてくれるのがコーチです。

私は、コーチングのクライアントには、約束した事はしっかり果たすよう、約束してもらいます。クライアントが次回のミーティングまでにあることを行うことに同意すれば、必ずその通り実行するか、或いは私に助けを求めることを当然の事と考えています。つい先日のことですが、あるクライアントが自分の部下への接し方を変えると約束しました。次回のミーティングでどうなったか尋ねると、結局何もしなかったとの答え。彼が挙げた理由は、時間がなかった、具体的にどうやったら良いのかわからなかった、本当に効果があるかどうか十分納得できなかった、といった言い訳ばかりで、私ががっかりしたのは言うまでもありません。

責任を持つ、というのは、単に約束した事を達成する、ということだけではありません。道を踏み外しつつあるとわかった時にも、責任を持って行動する、ということも含まれるのです。人間は、誰もが自分自身や他人に約束した事を守り損ねる状況に陥ることが時折あるものです。私はクライアントにも、それは普通のことだと言っています。変化や改善というのは、簡単な事ではありません。しかし同時に、脱線しつつあると感じた時には、積極的に私の助けを求めて欲しい、とお願いしています。

リーダーとは、しばしばパートタイムでコーチの役割も果たしているものです。あなたもリーダーであれば、自分の部下に責任を持つ事を要求するべきです。

では、コーチのような相手がおらず、責任を問えるのは自分だけ、といった場合はどうでしょう。我々は皆、達成をしたい、と自分自身に課したゴールを持っています。上にも述べたように道を踏み外す事はよくあることですが、そのような時、どうしますか。他人や自分のコントロールの効かない状況のせいにしますか。それとも原因を追及し、対処しますか。他人からの助けやアドバイスも仰ぎますか。

実行に失敗するという事自体は失敗ではありません。ここでもう一度言いますが、変化とは簡単なものではないのです。それが成功するか、失敗するかは、それに対する対応で決まります。自分に約束した事には責任を持ちましょう。これを習慣にすれば、改善、そして真の成功へと向かえるのです。


常に津波に対する準備をしておくことは無理

最近耳にした、スウェーデンに本社を置く衣類販売会社、H&M社の話です。2011年3月11日の地震の後、日本での臨時最高経営責任者ハンス・アンダーソン氏は、スウェーデンの本社にどうすればよいか指示を仰ぎました。津波や原子力事故などを伴う大規模な地震が起こった場合のプランや方針は社に存在せず、彼が受けた指示は、「我が社の価値観をガイドラインとし、あなたが一番良いと思われることを行って下さい。」というものでした。そして彼はその通りにしたのです。まず社員、スタッフ、顧客の安全を第一とし、必要な手を差し伸べました。アンダーソン氏はまた、事業を東京から大阪に移すという決断をし、引っ越しを承諾したスタッフとその家族の引っ越し費用を会社から出すと同時に、他ののスタッフには、休暇を与えました。全ての店舗や会社施設は、検査の上で安全性が確かめられるまで閉鎖されました。これは日本の会社が普通やる以上のことです。

極端な状況、通常なビジネスによくある状況に関わらず、あらゆる場合に備えての方針やプランを用意しておくことはできません。しかしながら、自分のビジネスの素晴らしい特徴を形作る価値観を決め、何でも決定する場合にそれをガイドラインとして使用する事はできます。もしこれができれば、あなたのビジネスも次の津波や予想もできなかった状況を乗り越える事ができるでしょう。


ゴールと方法との違いを見極める

先日、息子がとっている体操クラスに妻と息子とで車で向かっていた時の事です。途中で妻から、私が道を間違えたことを指摘されました。私は絶対そんな事はない、と言ったのですが、妻は逆の方向に行かなければならない、と言い張ります。しばらくそんな会話が続いた後にわかったのは、妻と私はそれぞれ異なった目的地を考えていたという事です。体操のクラスがその日に行われる場所自体、違うものが私たちの頭の中にあったのです。結局、こういう時には大体お決まりなのですが、正しいのは妻の方でした。

こういった出来事は、会社での決定事項に関して対立した意見がある時にもよく見られます。一致したゴールがない状態で、何かを達成するのにどうすれば一番良いかを議論している、などといった場合です。例えば海外事業開発の目的に関して同意がされていないのに、どうやって海外事業を伸ばせるかを議論するのは意味がないと言えます。

私は何かを決定する際に不一致が見られれば、まずその議論は方法についてか、あるいはゴールに関する事かを見極めるように心がけています。もし方法についての議論であれば、次にやるべきなのは、ゴールに関する同意は得られているかどうかを確かめる事です。そこで同意がない、ということがわかれば、方法についての議論はそこでストップさせ、ゴールについての同意をまず得ることにエネルギーを向けます。ゴールについての全員の意見が一致した上で、初めてそのゴールを達成するための様々な選択肢の利点やリスクについて、冷静な会話ができるのです。

今度、何か決定事項に絡んでの議論を行っている事に気づいたら、一息置いてから、その議論は方法に関する事か、或いはゴールに関する事なのか、自分に問いかけてみて下さい。方法について議論する前に、まずゴールについての合意を得る事が大切な事を忘れてはいけません。こうすることで時間の節約ができ、決定への近道となります。そうそう、息子さんを体操の練習に時間通りに連れて行くのにも役立つかもしれませんよ。