戦略と耐久トレーニングとの違い

体重を落とし健康になる為に、有酸素運動と言われるものを長時間やる人は本当にたくさんいます。スポーツジムに行けばトレーニングマシンを使っており、ニューヨークのセントラルパークではジョギングをやっているような人たちです。デンバーの通りやロッキー山中の山道にもいます。とにかくどこに行ってもこういう人たちは見かけられますね。競技場を走りながら息絶え絶えになっていたり、またそのつらさを超えてランナーズハイの域に達した人たち。多くは自分の限界を超えようとあと一周、あと1マイルと頑張ります。しばしばトランス状態のようになって、疲労と痛みに絶えるうちに、周りで起こっていることや自分の感情まで見えなくなることもしばしば。そこに行き着く前に結局エクササイズを全面的に放り出してしまう人います。

どういう訳か、有酸素運動を常に行うことは理想的だと言われるようになりました。私自身も上に挙げたようなエクササイズ方法が良いものと頭から信じてやっていたこともありますが、結局それは間違っているという結論に達しました。減量や健康に役立つのはこのような習慣的な有酸素運動ではないのです。習慣的有酸素運動を続けると、脳は脂肪を溜めなければならないという信号を受け取ります。結局脳にとっては、こんなに有酸素運動を続ければあとで脂肪が必要になると見える訳です。また継続的な有酸素運動は、必要なエネルギーを出す為に筋肉を使うようにというサインを体に送ります。脳は体がすぐに燃料を必要にしていると感じ、筋肉がその邪魔をしていると考えるのです。我々の体は良くできていて、何かが起こっていると感じると、それに対してすぐに対応します。

多くのビジネスは戦略を立てる際、習慣的有酸素運動に対するようなアプローチを取ります。マネージャーは戦略作成の為の長時間のワークショップに耐えます。そして長時間レースの準備をするかのように、最低でも1年間はその戦略を実行するまでちゃんとした見直しを行いません。私も、この戦略に対する習慣的有酸素運動的なやり方のせいで、マネージャーがとんでもない数のミーティングやレビューに出席する一方で、社員に難解な主要業績評価指標を報告する為の資料を集めさせ、そのような過程で、会社の「筋肉」がどんどん衰えていったのを目の当たりにしたことがあります。習慣的有酸素運動が体に対して脂肪を溜めるように信号を送るのと同様に、わざと簡単に達成できると思われるゴールを設定したり、年度の前半に大した結果を出さないことで後半の達成度がぐんと上がったように見せようと細工するマネージャーも見てきました。人間の体と同じく、中間管理職もばかではないのです。ちゃんとうまいやり方を考えているのです。

ビジネスではエクササイズでのトランス状態のようなものも見うけられます。マラソン走者は自分の体が走る機械のようになってしまうことで、周りで起こっていることや自分の辛さに対して麻痺したようになりますが、マネージャーも何ヶ月も前に決められた戦略をこなしているうちに、ビジネス環境で起こっていることや社内での混乱に対する感覚が麻痺してしまうことがあります。そしてとにかく決められたことに沿っていくことで、その戦略実行期間が終わるまで我慢するか、戦略全部を放り投げるかしてしまいます。辛くて仕方なくなるのですね。

人間は習慣的有酸素運動には向いていません。旧石器時代の人々は、長距離を歩き、時折危険な目にあっては全速力で逃げる必要もありました。獲物を捕まえる為により大変な努力をし続けることはたまにはあったでしょう。今日でも軽い運動やたまにやる高速ダッシュなどの、これに似たエクササイズは体に良いものです。実際、時に全速力で走ることは、耐久トレーニングそのものより、耐久力を付けるのに役立つということも証明されています。過ぎたるは及ばざるがごとしどころか、この場合は少ない方が良い結果が出る、ということです。

私も習慣的有酸素運動は止め、代わりに軽いウォーキング、水泳、サイクリングなどの間、3週間に一度くらいの割合でスプリントを混ぜるようになりました。その結果、体重が減り筋肉がついただけではなく、けがをしにくくなり、エクササイズ中に頭は冴え、その結果エクササイズが楽しくなっただけでなく、エクササイズを定期的に行うようになったことは大きなプラスです。

ビジネス界でも戦略に対する習慣的有酸素運動的なアプローチの欠点が見えてきたようで、東京三菱UFJ銀行のトップは、現在使われている超集中的なバランスドスコアカードに基づいた戦略マネージメントのやり方に代わるものを探しているそうです。その戦略プランニングのマネージャーが言うには、「行うのも大変な上、結果が出ないやり方」だとか。

私はこれまでにクライアントが戦略への習慣有酸素運動的アプローチに代わるものを開発するお手伝いをさせてきて頂きました。どのようなものだと思われますか。

普通の集中度の低い戦略で、レビューの主要業績評価指標も最高3つまで。重要な件に関しての検討、決定は簡潔にし、その年の戦略開発の検討は3時間以内に済ませます。

その結果は?

ビジネス上の業績上昇の迅速化。順応性の改善。戦略に対する賛成、協力度の上昇。戦略実行に関する責任感の向上。持続する可能性の高まり。

では、もっと大きなスケールでの戦略への努力が必要になった時はどうすれば良いのでしょうか。

エクササイズにおいて、負担の少ない運動を続けながら、たまにスプリントをすることで、体の耐久力が必要な時に出せるようになるように、同様のアプローチをとることで、会社のマネージャーや社員も、必要に応じてさらに集中的な戦略開発や経営努力ができるようになるのです。

あなたもビジネス或いはエクササイズにおいて習慣有酸素運動をやってはいませんか。もしそうであれば止めてください。代わりに時折スプリントをするようにしましょう。どちらの場合もその方がずっと効果が出るのですから。