マネージャーによる個人のパフォーマンス管理:スタッフの業績向上加速の秘訣

私の見た限り、幹部が業績の低さを嘆いている会社の9割では、人事部による組織的なパフォーマンス管理が行われているようです。例えば「目標による管理」(MBO)とか、それに似たようなやり方です。しかし、そういった会社のマネージャーに「そういった決まった勤務評定以外に、もっと非公式な評価も行っていますか。」と聞くと、大抵の場合、「何のことですか。」と逆に尋ねられます。

組織的な勤務評定そのものに問題がある、というわけではありません。問題は、そういった勤務評定の目的と、会社幹部がもとめている目的が違うものである、というところにあるのです。個人個人の業績を上げる為には、全く異なったアセスメントのプロセスが必要になってきます。

非公式勤務評定

実際、人事部による勤務評定というのは、業績向上に弾みをつけるには十分ではありません。会社勤めを少しでもしたことのある方なら、これを聞いて驚かれることはまずないでしょう。

フォーマルな勤務評定というのは我々が病院で受ける定期検診に例えることができます。定期検診を受けることで、体調が飛躍的に向上するなどとは誰も期待していませんね。体調を向上させるには、我々はスポーツトレーナーや栄養士といった人につき、指導、アドバイス、フィードバックなどを仰ぎ、目的への進捗状況をチェックする手助けをしてもらいます。

会社の状況を向上させる為にも、同じことが当てはまると思われませんか。

公式勤務評定と非公式勤務評定との違い

非公式な勤務評定というのは、マネージャーとスタッフの間で、個人的に1対1で行われます。その内容、結果は人事には報告されません。この評定は、ボーナスや昇級、会社で必要とされている能力に沿っているか、などといったことを評価するために行われるものではありません。これは純粋に、スタッフが会社にとってより良い業績を出す為の助けとするためのツールなのです。ですからマネージャーにとってもスタッフにとってもプラスになる筈です。マネージャーは結果を出すという責任がありますし、スタッフは普通、よりよい成果を出したいと思っているものですから。

非公式勤務評定における3つのポイント:飛躍的な向上のために

私は毎月非公式評定を行うことをお勧めしています。評定を頻繁に行うことで、スタッフに迅速なフィードバックを与えることが可能となり、スタッフも調整をすぐに行うことができるからです。1年に1度といった公式勤務評価で何ヶ月も前にやるべきであったことを初めて知らされる、などといった状況を免れることが可能になります。

非公式評価には以下の3つのポイントがあります。

1. 成功する為に必須のエリアを選択し、常にそれらを評価し続けること。

2. 観察可能な行動と現象に基づいた評価を行うこと。

3. 自分自身の判断力を使う勇気を持つこと。

これらを更に詳しく見てみましょう。

1. 成功する為に必須のエリア:「RFC」

マネージャーであれば誰でも、ちょっと時間を取って考えさえすれば、自分のスタッフが仕事上で成功する為に何をすれば良いのか見えてきます。これを考える際、私は以下の3つのカテゴリーを念頭におくことをお勧め致します。

a. 能力

b. 頻度

c. 結果

適切な能力を開発し、その能力を頻繁に活かすことのできるスタッフは、良い結果を出すことができる筈です。

能力 X 頻度 = 結果

これを営業スタッフに当てはめてみましょう。以下、具体的な例をいくつか挙げてみます。

結果 (Results)
営業成績
利益
新規開拓顧客
新製品売上高
見積もりや提案書の成功率

能力 (Competitiveness)
商品知識
コミュニケーション
新規ビジネス開発
優先順位の付け方

頻度 (Frequency)
1週間の営業電話の頻度
1ヶ月の営業訪問の頻度

目安として、結果、頻度、能力のそれぞれのカテゴリで、3〜5の項目をリストアップするのが良いと思います。そしてそれを書類に記録しましょう。これらのエリアでスタッフの評価を行う訳です。私はこの書類を各カテゴリの頭文字をとって「RFC」と呼んでいます。これは、もともとウィリアム・スキップ・ミラー氏が提唱した考えに基づいたものです。

2. 観察可能な行動と現象

個人個人の評価目標を設定する時に出てくる問題のひとつに、あやふやさという点があります。上記の「コミュニケーション能力」を例にとってみましょう。スタッフに「コミュニケーション能力の向上を図って下さい」と言った場合、実際のところ、何をすればよいということなのでしょうか。そう言われたスタッフは、具体的にどのようなアクションをとれると思いますか。

スタッフに何を期待しているのかを伝えたり、フィードバックを与える際には、観察可能な行動と現象という視点から行うことが大変重要になります。例えば、コミュニケーション能力の場合、マネージャーが「見込み客とのミーティングでは、営業スタッフはうちの営業方法にのっとり、顧客のビジネスについていろいろ質問をし、答えに耳を傾けるべきだ。」という風に言えば、とてもクリアですね。スタッフもこう言ってもらえれば、自分がどのように行動し、また評価されるかがわかります。

フィードバックも同様のやり方で行って下さい。「コミュニケーションスキルを磨いてもらわなくては駄目だ。」などといったあやふやな言い方をする代わりに、観察に基づいたフィードバックをするのです。例えばこんな風に。

「この間一緒に顧客を訪ねた時、君はずっとうちの商品の機能や特性ばかり話していたね。相手のビジネスについての質問は全然していなかった。君の話に割って入れる余地さえないくらいだったよ。」

こういったフィードバックはクリアです。改善の為のアクションのアイディアを出すステップでは、以下のように、観察可能な行動を含めて説いてあげましょう。

「この先1ヶ月ほどは、この点について改善するよう、頑張って欲しい。一緒に練習したとおり、顧客のビジネスに質問する姿を見せてもらいたい。」

これでスタッフは、パフォーマンスを向上し、より良い評価を得られる為に何をすれば良いのかわかるのです。

3. 自分自身の判断力を使う勇気

「目標による管理」(MBO)やそれに似た管理方法というのは、目標への進捗度、達成度を数値で計ります。しかしRFCでは、数値ではなく、学校の成績表のように1 – 5とかA – Fなどを使うことをお勧め致します。数値は確かに評価の参考になるかもしれませんが、より良い判断をする邪魔になる場合もあります。それは数値だけが全てではなあいもあるからです。

例として、クライアントの会社の営業マネージャーに彼女の営業スタッフの業績についての感想を訪ねた時のことをお話しします。彼女はスタッフの一人一人のMBOスコアカードを見せてくれました。ある営業スタッフのスコアカードを見ると営業成績は抜群で、その結果、勤務評定は良く、ある程度のボーナスまで出されたとのことでした。「このスタッフは本当に良くできるのですね。」というのが私の感想でした。

ところがマネージャーの答えは、「いいえ、彼女は私のチームの中でも最悪なんです。実は彼女のお客さんというのは前任者から引き継いだ人たちばかりで、全部リピート注文なんですよ。自分自身で開拓した新ビジネスや顧客は全然なし。」では何故彼女の勤務評定は良かったのでしょうか。マネージャーによると、人事のルールとMBOメゾッドに従った結果、どうしても勤務評定は良くなってしまったのだそうです。

そこで私は、マネージャーと一緒にRFCを作り上げ、それに基づいたスタッフ全員の評価を彼女にお願いしました。上記の問題のある営業スタッフの評価を見てみると「A」がつけられています。「彼女は最悪だ」と言ったばかりだというのに。マネージャーは、「目標に達しているのだから、Aをあげるべきだと思ったんです。」と説明しました。

私:「ちょっと待って下さい。RFCはあなたとスタッフ間のみで使われるべきツールですよ。MBOのガイドラインに従う必要はないのです。あなたが本当にフェアだと思う評価を与えて下さい。彼女が自分で頑張って達成した営業結果に対しての評価です。人から譲り受けた顧客ではなく。」と答えました。

マネージャー:「え、私自身の判断で評価してもいいんですか?」

私:「その通りですよ。あなたはマネージャーとしてのお給料をもらっているんですから。」

マネージャー:「でも、私が間違っていたら・・・。」

私:「心配することはありませんよ。時々間違うことはあるかもしれません。でも、もしスタッフがあなたが間違っていると感じたら、それがどうしてなのかを説明できる機会を与えてあげれば良いのです。観察可能な行動と現象を使ってね。それに基づいて、また考え、調整をして下さい。」

マネージャーはその通りのことを行い、結果、営業スタッフの姿勢が変わりました。それからそのスタッフは、引き継いだアカウントに頼るだけではなく、新しいビジネスを開拓し始めたのです。

非公式評価の利点

私の経験から言って、マネージャーにとってもスタッフにとっても、非公式勤務評価は良い結果をもたらします。これは、マネージャーには、スタッフを育成し自分に責任のある結果を出す為の組織的なやり方を与えてくれます。スタッフを評価する為のRFCのカテゴリや基準を自分でデザインし、評価時には自分自身の判断力に頼ることになります。スタッフは頻繁なフィードバック、アドバイス、コーチングが受けられることをプラスととり、成長する為にチャレンジを与えられることにやりがいを感じます。つまり彼らにとってマイナス面は殆ど無く、逆に利点は多いと言えるでしょう。困難な仕事をこなすことは満足につながる、と私は思っています。

同時に、私がこの非公式評価を取り入れるお手伝いをさせて頂いたマネージャーの方々から、人事主導の公式勤務評定もやりやすくなったとの声も頂きます。それにこのやり方は個人的に行われ、評価結果が人事に行くこともないので、スタッフもあまり怖がらないようです。

非公式評価システムの取り入れ方

非公式評価システムを取り入れることは、比較的簡単で、また時間もそんなにかかるものではありません。

1. 最初に自分でRFCを作成するところから始めて下さい。 結果 、 頻度 、能力のそれぞれのカテゴリーについてどのような行動、現象を期待しているかを、簡単に説明しましょう。

2. それからスタッフにスコアをつけます。それぞれに、そのスコアを与えた理由を観察された行動、現象を用いて書き留めて下さい。それから、次回の評価時までにそのスタッフが向上する為に何をするべきと思うか、また行動と現象という観点から、どのような期待をしているかも書いて下さい。

3. スタッフと面接を行います。だいたい30分から45分程度が適切と思います。あなたが上で書いたRFCを見せてあげましょう。そして評価を進め、スタッフに期待しているもの、実際にこれまで観察しての感想、それに対する評価とその理由、評価を向上させる為に何をすれば良いのか、次回評価時までに同のような変化を期待しているかを説明して下さい。

4. 次回評価時まで、1週間に1度、もしくは都合のよい頻度で、スタッフ一人ひとりの行動の観察記録をつける時間をとることをお勧めします。何、いつ、誰と、といった具体的な内容にして下さい。こうすることで、次回評価面接時に具体的な例を出したり、細かいことを忘れないようにすることができます。

これはマネージャーとスタッフの間のマネージメントツールにすぎない訳ですから、殆どのマネージャーは上司の許可などなしにこのシステムを取り入れることが可能です。人事にも関係ありません。この非公式評価システムにより、マネージャーが個人個人の業績向上に深くかかわることが可能となり、マネージャー、スタッフの双方にとって有利と言えます。