ローカルで考えてグローバルに行動する:国境を越えたビジネス新世代における日本

ビジネスにおいて「世界視野で考えてローカルに行動するべき」と最初に提唱したのはソニーの盛田昭夫氏でした。この言葉はグローバルビジネスを構築するにあたってのスローガンのようなものにまでなりましたが、一方で盛田氏の率いるソニーは、その後失墜の一途を辿る事となります。あれから20年以上経った今、彼の格言は現在のグローバルビジネスの世界でも通用する格言でしょうか。通用するかもしれません。

でも現代では、その逆ではないでしょうか。グローバルに行動し、ローカルで考えるべきだと思います。

我々の多くは、「ローカルに行動」という部分を「参入企業が『よそ者』だと感じられなくレベルまで、ローカル市場の需要、習慣、文化や好みに合わせる」という風に捉えました。実際、盛田氏自身も、自分はアメリカではアメリカ人であり、日本では日本人である、と明言しています。

しかし、人々は今まで親しんできたローカルビジネスと同じようなビジネスの参入を望んでいるでしょうか。ローカルに受け入れてもらえ、成功する秘訣は、他のビジネスと似たようなこと、現地の人々が慣れ親しんでいる事をやることでしょうか。

もう何年も前になりますが、ルノーが日産の株の過半数をてにいれてから間もなく、NHKが日産の日本人社員がいかに新しいフランス人上司や同僚とうまくやっているかを追跡取材し、カメラに捉えました。メガーヌ発表のテレビ広告キャンペーンにあたり、フランス人のマネージャーは「グローバルに考えてローカルに行動」の精神にのっとり、典型的な日本人一家とメガーヌを撮影する事を提案しました。しかし日本人マネージャー達は、日本人がルノーに対して感じている大きな魅力は、他ならぬフランスの企業であるというところにある、と理解しており、代わりにフランス人家族とメガーヌを起用すれば、もっとインパクトがある、と主張したのです。

このまるで逆といえる日本人マネージャー達の見方は、グローバルに行動し、ローカルで考える、というものでした。グローバルに行動する、というのはこのケースですと、フランスという部分を隠すのではなく、逆に強調する、ということです。そうしなければ日本の他の自動車ブランドと似たようなものとみなされるわけですから。

ローカルで考えるというのは、この場合、フランス産であるが故に、フランスやその他のヨーロッパの国々であれば与えられないようなパワフルな影響を日本人に与える事が可能であると理解する事です。メガーヌはフランスでも売れる車ではありますが、それは実用的であるから、というのが理由です。多くのフランス人にとってはメガーヌはありふれた車なのです。(ルノー社には悪いですが。)ところが同じ車が、日本では異国風と感じられ、いい趣味やテータスの象徴ともなりえるわけです。

フランス人マネージャー達は、この事を理解できませんした。ルノー・日産がローカルな「日本の会社」であり、よそ者ではない、と見られる事に執着していたのです。結局、日本人マネージャーの主張は通らず、ルノーは素晴らしい機会を逃してしまいました。

日本人マネージャーはもちろん正しかったと言えますし、日本のビジネスマンはきっと殆どそう思ったでしょう。実際、日本ではこれは常識です。では、日本のビジネスが海外に進出する際、多くがこのことを実行できないのは何故でしょうか。

大変成功していると言えるユニクロチェーンを傘下に収めるファーストリテイリング社の最高責任者であり、大胆な起業家として知られる柳内正氏は、Reimagining Japan(日本語訳版「日本の未来について話そう」)という本の中で、イギリスに進出した際の失敗についてこう言及しています。

「私たちはひどく失敗してしまいました。・・・一番の過ちは、何でもイギリス風にやろうとしたことです。自分たちの強みを活かそうとしませんでした。・・・日本人は、ここではこうだけれど、他では違う、といった考え方をやめなければいけませんね。」

柳内氏は、「こことそれ以外の場所を区別しない」日本人が必要だと言っています。

柳内氏のコンセプトは、全ての日本企業で活かされていないという訳ではありません。西武グループの日本でのインテリア小売店であるMujiは、1990年代の不況真っ只中にスタートしたビジネスですが、ブランドなし、シンプルですっきりした商品デザインで比較的良い成功を収めました。(Mujiは「無印良品」を縮めたもので、その名の通り、「ブランド無しの商品」を意味します。)Mujiはその後ヨーロッパで大成功をおさめており、その商品は日本の1.5倍の値段で売られています。

Mujiはそのデザインの強みを活かしました。世界中で、人々は日本の禅的なシンプルさを含む美観やデザインに魅力を感じています。Mujiはわざとシンプルなデザインで日本のインテリア市場を魅惑しようとした訳ではありませんが、シンプルさがもたらした影響は明らかです。日本の消費者は特にシンプルさを重用ししてはいません。しかしヨーロッパの人々の目には、そのシンプルさは外国風で魅力的、かっこいい、と映ったのです。

Mujiは、ヨーロッパにおいて日本っぽさを隠そうなどまるでしていません。逆に強調しているのです。Mujiの海外顧客が高く買っているのは、まさにその日本的な部分なのですから。皮肉な事に、多くの日本人は、Mujiの日本的な部分に気づいておらず、別の理由でMuji商品を購入しています。

このことから、グローバルビジネスを育てるにあたり、私たちはどんな事を学べるでしょうか。

  1. 海外で常識と思われるものに合わせる為に、自分の国のアイデンティティー、価値観やビジネスのやり方を変えなければならない、などと思い込まない事。異国風であるということがまさに顧客が求めているものかもしれないのですから。
  2. 顧客と市場を理解する事。あなたのビジネスを国内でユニークなものとしている要因は、海外ではまるで違うものかもしれません。国内で慣れているものと違うから、とという理由で、海外であなたの強みを活かすことを躊躇してはいけません。
  3. 国内の顧客と海外の顧客では、あなたのビジネスの違った面をより良く評価するかもしれません。海外では国内よりさらに高い値段で売れる、といった可能性もあります。そういったチャンスに目を光らせましょう。
  4. 特にサービスを提供するビジネスの場合、国内と海外では、一番利益率の高い商品・サービスは違うという事もあります。実際、海外ではまるで違うものを提供する場合もあるでしょう。
  5. 日本人であれば、自分の日本人らしさに自身を持って下さい。それが強みともなれるのです。あなたらしさは海外で魅力となります。